2019 Fiscal Year Research-status Report
近代都市における地域共同体の変容に関する歴史的研究―京都市を事例として―
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18K00950
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Research Institution | Kyoto Human Rights Research Institute |
Principal Investigator |
井岡 康時 公益財団法人世界人権問題研究センター, その他部局等, 嘱託研究員 (60810926)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 丈広 公益財団法人世界人権問題研究センター, その他部局等, 嘱託研究員 (60467397)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 都市共同体とその機能 / まちづくり / 地域史料の保存 / 都市とその周辺地域における差別と排除 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近代の都市住民が日々の生活を通じて形成・更新していく共同体の歴史的変容を明らかにしようとするものである。具体的には京都市東山区や、その周辺地域において、今村家文書をはじめとする在地史料の調査と分析・研究を進めることにより、①近代の都市共同体の変容過程の解明、②都市共同体と周辺の被差別部落や都市下層民などマイノリティとの関係の変容の解明、③以上のような変化が地域の組織、秩序、生活意識に与える影響の解明、といった3点を研究の目的としている。 上記の目的を達成するため、2019年度においては次のような研究を進めた。①近世京都の代表的な被差別部落である六条村と都市の関係について公儀役や皮革製品の供給などの面から検討を加えた。②京都市中を流れる鴨川については、定期的に土砂を浚える公共事業が実施されてきたが、この事業には被差別民もかかわっており、その実態を検討することによって、被差別民衆と都市共同体、公権力との関係について解明を進めた。③中世から近世初頭にかけての今村家が、地域社会のなかで果たした役割や、その歴史的的位置づけについて検討した。④近年、近世絵図のインターネットでの公開が進められているが、被差別部落の名称や所在地に関する情報の公開のありかたが問題となっており、本研究においても、明快な見解をもち、必要があれば説明責任をはたすべきであると考え、議論を深めた。⑤被差別部落に残された歴史資料の保存と、その活用の方途について、地域のまちづくりの進展状況と合わせて検討した。 以上の研究活動から得られた成果をふまえ、また見えてきた課題の解決を図りつつ、2020年度の研究を進めていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の中核的な史料である今村家文書のデジタル化を終え、その成果をもとに、地域の生産、流通、交通、あるいは公共事業など多様な観点から実証的な研究を進めることができた。また、デジタルアーカイブにおける絵図の公開をめぐる問題点について議論するなど、現代的な課題についても研究を深めることができた。 本研究は、近代の都市共同体の歴史的変容を明らかにするとともに、その成果の社会還元も考えているが、上記のように研究成果もあがっており、目標達成に向けて順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究会メンバーによる研究成果の発表をおこないつつ、次のような課題に取り組んでいく予定である。①研究を進めることによって、すでに刊行されている『今村家文書史料集』に添付された絵図の翻刻には問題があることが判明した。この修正作業を進めていく。②本研究の対象地域となっている、京都市内の被差別部落に所在する柳原銀行記念資料館が所蔵する「妙法院文書」は、近世後期の地域の実情を明らかにする多くの情報を含んでおり、この翻刻作業を進める。③柳原銀行記念資料館における展示企画にも協力し、新しい研究成果の発表をおこなう。④さらに市民向けの事業として、関係地域の歴史と現状をふくんだパンフレットを作成していきたい。⑤また、『今村家文書史料集』の続篇刊行についても検討していきたい。
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Causes of Carryover |
必要額の大きい地域史料の撮影と関係古文書類の購入において、研究課題の達成に向けて着実に成果を積みあげるために、地域史料の撮影を優先することとした。これにより古文書類の購入を控えたため、次年度使用額が生じた。2020年度も引き続き関係史料の調査・収集を続けていくので、その過程で生じることが予想される、史料の撮影やデジタル化の経費と、古文書類購入の経費のバランスをとりながら使用していきたい。
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Remarks |
研究課題に関する2019年度における定例研究会での研究報告者・報告主題の報告 松尾奏子・「諸式留帳」からみる近世前期の六条村/廣岡浄進・デジタルアーカイブスにおける絵図・古地図の公開をめぐる諸問題/小林ひろみ・大仏柳原庄の加茂川浚(加茂川普請)/河内将芳・同時代史料からみる戦国時代の今村家/山内政夫・旧崇仁小学校資料と柳原銀行記念資料館資料保存研究会の展望について
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Research Products
(7 results)