2019 Fiscal Year Research-status Report
請来典籍の集積・活用からみた古代王権の「知」の統合策に関する総合的研究
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18K00957
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
中林 隆之 専修大学, 文学部, 教授 (30382021)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 禎昭 専修大学, 文学部, 准教授 (60751659)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 請来典籍 / 仏典 / 律系典籍 / 授戒儀礼 / 外典 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、引き続き、当初の目的である「7世紀から10世紀にいたる東アジア地域からの請来仏典と中央学僧集団たる「宗」編成の推移と傾向」の検討に取り組んだ。とりわけ昨年度以来取り組んできた、律宗と戒律学修システムの整備過程、および9世紀末以降のそれらの変容と、律宗の地位低下の理由などを考察した結果を、学術論文「日本古代の授戒制度と律宗」(『日本歴史』862、2020年3月)として刊行することができた。 なお上記の研究を進める過程で、インド由来の律宗関連典籍の中国への流入・漢訳の過程およびそれらが周辺諸国へ流布される過程、とりわけ日本列島での仏典や戒律儀礼の受容過程についても視野を広げ、現在検討を進めつつある。すなわち、従来関心がほとんどもたれてこなかった鑑真以前の戒律儀礼制度の問題について、7世紀以来の律系典籍の受容過程のあり方とも関連させながら、その実態を解明するための予備的考察を進めつつある。 また、これまでの研究蓄積・成果をもとに、日本列島における仏教の受容から本格的・主体的導入の過程およびその特質、7世紀後半から8世紀前半にかけて整備された官大寺とそこで挙行された仏事の性格などに関する、概括的研究論文をまとめることができた。 その成果はほどなく刊行される予定である。 他方、仏典以外の典籍(外典)の受容とその流布の過程の検討についても、研究分担者とともに少しずつ進めつつある。具体的にはもともと星(北辰)に対する陰陽五行的な信仰・儀礼であったものが、仏教信仰としての妙見信仰として取り入れられる過程と、その所依経典の流布の経緯、およびその後の展開についての研究の糸口をみいだしつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記したように、研究課題に密接する律系典籍の活用に関わる研究成果として、学術論文を刊行した。また日本における仏典を含む仏教の国家的受容・展開とその性格について概括した研究論文も刊行予定である。またこの間の研究を通じて、律系典籍の東アジア規模での移動と、それにともなう仏教的規範の受容過程に関する研究を進めつつある。 加えて、外典の受容の問題についても妙見信仰を切り口に検討しはじめている。
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Strategy for Future Research Activity |
律系典籍の東アジア規模での移動と、それにともなう仏教的規範の受容過程に関する研究を引き続き進展させる。 また、当初の目的の一つである高麗「義天録」所収の章疏類と日本の平安期以前の諸仏典との異動を明らかにし、中国-朝鮮半島-日本の典籍の請来・移動の大枠をつかむ研究を進める。 加えて、請来された外典と関わりのある仏教信仰の展開関係について、9世紀以降本格化する密教典籍の受容問題とも絡めて検討していく。
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Causes of Carryover |
当初予定していた中国杭州での調査巡見・国際会議などが台風の影響でキャンセルせざるをえなくなり、今年にはいって新型コロナウイルスにより、予定していた国内学会への参加も控えざるをえなくなったため次年度に繰越金が生じた。 次年度も現状では調査・学会などへの出席は見通せないが、状況が回復次第計画する。またそうでなければ、関連文献の購入などで対応する。
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Research Products
(5 results)