2019 Fiscal Year Research-status Report
戦国期の秩序流動化・再構築メカニズムの研究―発給文書と秩序認識の関係を中心に―
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18K00962
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
村井 良介 岡山大学, 教育学研究科, 准教授 (30419684)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 戦国大名 / 戦国領主 / 国衆 / 地域秩序 / 大友氏 / 判物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では宛行状や安堵状といった判物発給主体がおおよそ16世紀頃に変化することに注目し、そこから戦国期における地域秩序の流動化と再構築のメカニズムを考察することを主たる目的としている。 本年度は、昨年度進めた西国についての史料収集と、それを用いた分析に基づき、その成果の一部を発表した。まず「戦国期大友氏勢力圏における判物発給をめぐって」(矢田俊文編『戦国期文書論』、高志書院、2019年11月)を公表した。大友氏の判物はほぼすべて書状形式で、知行給与の文書はほぼすべて預け状の形式をとる。これに対して、大友氏配下や、あるいは周辺の領主層の判物を分析すると、豊後国内の領主層はおおむね大友氏と共通する様式となるが、たびたび大友氏から離反する田原宗家は、離反している時期には書下形式の判物を発給している。周辺の領主では大友氏の支配下にあった領主は、従属後に判物が書状形式となる傾向がある一方、大友氏と対立関係にある時期が長い領主は書下形式の判物が多い。判物の様式が書状形式か書下形式かということは、従来当該権力の支配の強弱の問題として論じられていたが、本研究から、支配の強弱とは無関係であり、どういった秩序を共有しているかが問題であることを明らかにした。これにより、判物発給が戦国期における新たな秩序形成と連関しているという見通しが強化された。 このほか、2019年11月9日におこなわれた第2回「災害文化と地域社会形成史研究会」(於岡山大学)で「戦国期における地域秩序形成をめぐって」と題する口頭発表をおこなった。美作国を中心に主として中国地方に関して、室町期における幕府による所領安堵がどのような地域秩序によって担保されており、それが戦国期にどのように変容するのかについて論じた。 また、東国に関して本年度は自治体史を中心に史料収集と分析を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウィルスの影響で、3月に予定していた史料調査がいくつか中止を余儀なくされたが、全体的には大きな支障は出ていない。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度に中止になった史料調査については、新型コロナウィルス対応による施設利用や移動制限の解除がされれば今年度中にも補充調査をおこないたい。今年度予定していた調査などにも影響が出ることが予想されるが、2020年度に予定していた畿内近国についての史料収集は一部先行しておこなっていたこともあり、2019年度までの西国・東国の調査成果も用いて進められる範囲で進めていく。予定していた研究会開催なども予定どおりの開催が可能か危ぶまれるが、研究成果の発表の準備を進める。
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Causes of Carryover |
3月に予定していた調査が、新型コロナウィルスの影響により中止となったため。新型コロナウィルス対策の移動制限と施設利用制限が解除され次第、中止となった調査をおこないたい。
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Research Products
(2 results)