2018 Fiscal Year Research-status Report
A Research Study of Medieval Shinto Texts Archived at the Shinpukuji Temple
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18K00964
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
トレンソン スティーブン 早稲田大学, 国際学術院, 准教授 (10595432)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 真言密教 / 中世神道 / 真福寺 / 神祇書 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、真福寺所蔵『野決』の神祇書を考察することによって、すでに十二世紀末の醍醐寺において中世神道説を説く神祇書が成立していたかどうかを確認するものである。『野決』は、醍醐寺座主勝賢(1138-1196)の教えを仁和寺御室守覚法親王(1150-1202)がまとめて記した聖教であるが、後に醍醐寺の法流を受け継いだ真福寺の学問僧によって書写された。この真福寺の『野決』にはいくつかの神祇書が付随しているが、このことは醍醐寺の密教が中世神道の形成に重要な影響を与えたという可能性を示す。ところが、中世神道の一つの基準点が醍醐寺にあるという新視点に対して積極的に取り組む研究者もいれば、強く疑問に思っている学者もいる。それはすでに十二世紀末に醍醐寺で中世神道の説が確立したということが驚くべき信じがたい新展望だからである。だが、その疑問は、『野決』の神祇書の教義を醍醐寺の密教思想と照らし合わせながら分析するという研究がまだ行われていないということにも起因する。そのために、本研究では、『野決』の神祇書の内容と醍醐法流の密教の歴史的位相を解明し、十二世紀末の醍醐寺で中世神道説が確立していたかどうかを検討する。 『野決』付随の神祇書に関して、完全なセットは真福寺に所蔵されているが、称名寺聖教(金沢文庫)にもいくつかの神祇書の写本が残っている。なお、本来称名寺聖教に含まれていたと推定される一具の『野決』付随神祇書の写本は尊経閣文庫へ移転された。よって、平成30年度の研究計画に基づき、本年度は真福寺、称名寺や尊経閣文庫で『野決』付随の聖教を調査し、その教義的内容を検討した。 本調査とは並行的に、本年度にはさらに中世醍醐寺の密教思想についての研究も行い続けていた。特に、鎮魂祭(招魂祭)と醍醐法流の招魂延命法における「米」(仏舎利・宝珠)の役割に注目し、中世における神道と密教の思想的交流について考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は順調に進展しているが、本年度に広島大学から早稲田大学に転出し、新しい仕事の環境に慣れてくるまでは少し時間や手間がかかったため、聖教の調査と内容分析の作業を終えることができなかった。来年度にその調査を終わらせるようにしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後研究計画通りに研究を実施する。すなわち、『野決』付随の神祇書の教義的内容を醍醐寺の密教思想の観点から見做し、分析する。『野決』付随の神祇書がすでに十二世紀末の醍醐寺で成立していたという点を前提とするが、その教義を同時代の醍醐寺の密教思想と照らし合わせることによって、どこまでその前提の妥当性が裏付けられるかを検討する。また、『野決』付随の神祇書だけではなく、それと深く関係するほかの神祇書や聖教の内容をも横断分析し、考察する。
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Causes of Carryover |
当初の研究計画より支出が少なく、未使用分を来年度の物品費(研究関係の図書)及び旅費(国内・国外の研究会や学会など)に使用する。
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Research Products
(3 results)