2020 Fiscal Year Research-status Report
A Research Study of Medieval Shinto Texts Archived at the Shinpukuji Temple
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18K00964
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
トレンソン スティーブン 早稲田大学, 国際学術院, 准教授 (10595432)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 真言密教 / 中世神道 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中世日本宗教史という分野における重要な問題である真言密教と神祇思想(中世神道)との関係について考察するものである。本研究の計画を作成した時点に、中世神道の言説の形成に醍醐寺の密教が影響を与えたという可能性がすでに指摘されていたが、最近発表されたほかの(国内・国外の)研究者の研究成果によって、中世神道という課題における醍醐寺の真言密教思想の位相がさらにハイライトされている。本研究では、真福寺に所蔵されている神祇書を手掛かりとして、醍醐寺の密教思想が中世の神祇思想に与えた影響の歴史的プロセスや範囲を見直している。特に、醍醐寺の法流が神祇思想に及ぼした影響がすでに十二世紀末に発生していたのか、あるいはそれより少し後の時代、鎌倉中期~後期から世に現れた現象だったのかを再確認している。 このような問題において特に注目しているのは即位灌頂という儀礼である。中世神道には数多くの側面があるが、密教と神道を結び付ける側面の中に新天皇が即位する際に行われるといわれる即位灌頂という密教作法がある。この作法の歴史については不明点が多いが、天台宗の慈円(1155~1225)は自筆の「夢想記」に即位灌頂の実施に触れている。これによれば、天皇は金剛界曼荼羅を代表する一字金輪であり、皇后は胎蔵曼荼羅の仏眼仏母に対応し、両者の会合によって生まれる次代の天皇は大日如来あるいは天照大神であるという。この文脈に天照大神が出ているために、慈円の夢想が中世神道の形成史において看過できない重要な課題であることは明らかである。先行研究では、慈円のこの思想が彼独自のものであるという見解が強いが、本研究では、慈円の思想の根幹が同時代の醍醐寺の法流の中にも見出せるという事実が判明した。この研究成果は、醍醐法流が中世神道に与えた影響のプロセスがすでに十二世紀末に始まったという本研究の仮説の妥当性を裏付けている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は順調に進展しているが、新型コロナウイルスのパンデミックの影響により研究成果の口頭発表や論文の執筆にやや遅れが出ている。そのために今年の2月に「補助事業期間延長承認申請書」を提出し、一年の延長を申請した。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度に研究成果をまとめていくつかの論文を執筆することに集中する。研究計画調書に「本研究課題に関わる会議やワークショップを開催する予定である」と書いたが、パンデミックによりそれが果たしにくくなり、代わりに英語でいくつかの論文を国際雑誌に投稿する予定である。
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Causes of Carryover |
今年度に本研究を完成させる予定であったが、新型コロナウイルス拡大の影響で参加を計画していた多くの国際学会がキャンセルされ、あるいはオンラインで行われるようになったために、研究費(旅費)の未使用分が多くなった。次年度には未使用分を物品費(研究関係の図書)及び旅費(資料調査や国内研究会など)に使用したい。
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Research Products
(2 results)