2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K00965
|
Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
森下 徹 山口大学, 教育学部, 教授 (90263748)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 城下町 / 岡山 / 萩 / 仲仕 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず城下近郊農村の研究に関しては、岡山県立記録資料館において小西家文書の整理作業にあたった。同史料群は、岡山藩上道郡口分の大庄屋史料であり、岡山城下近郊部の社会構造をうかがうことのできる種々の史料からなっている。現在同資料館に未整理状態で保管されているので、内容目録の作成に着手した。2018年度中に全体の半数以上について、内容を確認し目録を作成することができた。 また萩藩領に関しては、萩城下や山口などの都市域とその周辺農村で生産された藍と、それをめぐる藩専売の動向について検討した。そして、品質のうえで阿波藍を凌ぐことができず、結果的には専売制としては失敗に帰したこと、ただし入津する阿波商人への課税に比重を移したこともあって、阿波商人にとっての利権独占に資するものとして存立したとの経緯を確認した。 さらに都市域の労働市場の問題として、大坂の蔵仲仕について検討した。そして、17世紀末に岩国藩が蔵屋敷を新規に購入するさいの交渉にさいして、岩国藩所属の蔵仲仕と購入先の蔵屋敷の仲仕とが実質的な折衝を行っている事実を発見できた。単に荷役に従事するにとどまらない、民衆世界のネットワークの存在をうかがうことができた。なお岩国藩蔵屋敷の購入過程についてもあわせて検討し、主要な蔵物である紙が、大坂町人の委託販売から、蔵元方を拠点とした一括販売に切り替わったことが、購入の契機であったことも明らかにしている。 この他、近世の城下町や蔵屋敷の概括的な特徴に関して、事典に執筆もしている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画で予定していた岡山記録資料館の整理作業については順調に進めることができた。また萩の都市域と周辺農村にかかわる藍専売の問題や、大坂における労働市場の問題についても、分析を進め成果として発表することができた。これらのことから、当初の計画はおおむね順調に進んでいると評価できる。 ただし津山郷土資料館における、近郊農村の調査については、同館が閉鎖中であることもあって、2018年度には進めることができなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き岡山県記録資料館における小西家文書の整理作業を進める。これについては2019年度中に内容目録を完成させ、同館にて公開準備が整い次第、内容分析に移る予定である。なお収集はデジタルカメラにての撮影が中心となる。 また津山郷土資料館にて、津山城下や周辺農村(山北村)関係史料の収集作業にあたる必要がある。同館は閉鎖中ではあるが、岡山県記録資料館に写真帳があり、それを閲覧し必要箇所をコピーして収集する予定である。 この他、近世の地域史研究や労働史研究、身分研究などの研究動向についても検討を進め、必要な情報収集を行うとともに、機会をみて成果発表も行いたいと考えている。当面、和泉の小藩の奉公人問題を扱った研究をめぐる書評会に参加すること、および日仏での身分研究をめぐる論集発行の企画に参加することを予定している。
|
Causes of Carryover |
当初計画では、津山郷土資料館にて津山城下・近郊農村の史料調査を予定していた。しかし岡山県記録資料館小西家文書の整理作業に注力したため、当初の予定通り執行することができなかった。2019年度に、津山関係の史料調査を進めるため、当初予定額と合わせて執行する計画である。
|
Research Products
(4 results)