2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K00967
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
佐伯 弘次 九州大学, 人文科学研究院, 教授 (70167419)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 室町遺文 / 九州 / 武家文書 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.室町遺文九州編データベースの作成:室町時代(1392年~1467年)の古文書を抽出し、データベースを作成した。前年度に行った『大分県史料』全37巻からのデータベース化の増補・修正を行った。 2.九州大学所蔵中世文書の検討:九州大学所蔵中世文書の精査を行った。とくに日本史学研究室所在の来島文書・草野文書・一紙文書・宇佐宮社家文書(樋田文書・金光文書・乙咩文書)の原本調査を実施し、室町時代の文書だけでなく、中世文書全体の形態的特徴や裏書・封式・墨引・料紙等の確認を行った。一部については釈文を作成した。 3.学外中世文書原本の調査:筑後木屋文書の原本調査を実施した。木屋文書は、中世武家文書であり、南朝関係文書が多いことで知られるが、その花押や筆跡の検討を行い、また近世の写本に現存しない文書があることを確認した。 4.松浦党関係文書の研究:上松浦党一族の家文書である有浦文書の内容の検討を行った。本来は、有浦文書は斑島文書と一体の文書であり、斑島文書の検討も併せて行った。とくに南北朝後期から室町初期の九州探題今川了俊の時期の文書を重点的に検討した。 5.室町時代の九州の文書の検討:九州の中世文書29169点を整理し、まず地域(県)別に鎌倉・南北朝・室町・戦国の4時期の点数を整理した。その結果、①南北朝期と戦国期が多く、南北朝期が最多である地域(佐賀県・熊本県・宮崎県・鹿児島県)、②南北朝期と戦国期が多く、戦国期が最多である地域(太宰府天満宮・大分県)、③時代が下るに従い、数が増加する地域(宇佐宮・対馬)、④鎌倉・南北朝期に集中し、室町期以降減少する地域(松浦党・肥前や薩摩・大隅の国人文書)と4つの類型があることを明らかにした。さらに、九州の室町期の文書は、4時代の中で最も点数が少ないことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルスの流行によって、学外の中世文書の原本調査がほとんど行えなかった。また、学会の多くがコロナ禍のために中止や限定的開催となり、中世文書研究に関する情報交換が限定された。
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Strategy for Future Research Activity |
九州の中世文書の更なる収集・調査・検討を行う。とくに、網羅的史料集が刊行されていない福岡県内(筑前・筑後・豊前の一部)の中世文書の収集に努める。さらに、九州の室町期の文書が、前後の時代より極めて少ないことの原因の究明を行う。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のために学外の中世文書調査や学会における情報交換をほとんど行うことができず、研究成果報告書を作成することができなかった。次年度にはこれらを克服し、研究成果報告書を刊行する予定である。
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Research Products
(3 results)