2018 Fiscal Year Research-status Report
Historiography of Social Movements in The Latter Part of The Twentieth Century in Japan : In Terms of Interdisciplinary Studies
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18K00969
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Research Institution | Nagano University |
Principal Investigator |
相川 陽一 長野大学, 環境ツーリズム学部, 准教授 (90712133)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新井 勝紘 専修大学, その他部局等, 参与 (40222707)
原山 浩介 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (50413894)
白井 哲哉 筑波大学, 図書館情報メディア系, 教授 (70568211)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 20世紀 / 戦後史 / 社会運動 / アーカイブズ / 成田空港 / 三里塚闘争 / 記録映画 / オーラルヒストリー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究プロジェクトは、高度成長期の日本において発生した社会運動や社会紛争の記録収蔵と活用を目的に、研究機関や資料館等に収蔵された社会運動資料群の形成過程と全体構造を把握し、歴史学・アーカイブ学・社会学の領域横断的な研究により、それらが有する学術的な意義を解明することを目的としている。主たる研究対象として、研究代表者が1998年から調査研究を続けてきた三里塚闘争(成田空港反対運動)を設定している。 成田地域では、1990年代に隅谷三喜男や宇沢弘文らの研究者グループが加わり、地域住民と国等の間で、成田空港建設をめぐる対立の歴史的根源を明らかにする成田空港問題シンポジウム等が開催された。これらを契機に同問題に関する史資料収集が住民と研究者の連携で実施された。当研究プロジェクトではこれらの史資料の収蔵機関である成田空港 空と大地の歴史館より、成田空港反対運動にかかる記録映画の全国上映運動に関する一次資料群「元小川プロダクション資料」を国立歴史民俗博物館に借り受け、2018年度は資料整理調査会(計8回)、研究会を含むプロジェクト運営会議(計5回)を開催した。2018年9月には現代史サマーセミナーとの併催による公開研究会「現代社会運動資料の課題と展望:「三里塚闘争」・空と大地の歴史館から考える」を開催し、国内外の研究者とともに現代社会運動史資料の整理と活用の可能性について討議した。特定地域へのケーススタディも開始し、2018年12月から2019年1月にかけて長野県における上映運動の経験者への聞き取り調査を実施して史資料の寄贈を受け、オーラルヒストリーと史資料調査を併用した調査を展開している。 「元小川プロダクション資料」等の構造把握と分析を通じて、様々な社会層によって社会矛盾への異議申し立てが試みられた1960年代末から1970年代の日本の社会運動の全体像の一端が明らかになりつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度は「元小川プロダクション資料」の構造把握と研究活用に注力することを早期に決定し、共同研究者の所属機関である成田空港 空と大地の歴史館と国立歴史民俗博物館の連携のもと、一次資料を精密に調査する態勢を整えることができた。 2018年度内に資料整理調査会を計8回、研究会を含むプロジェクト運営会議を計5回開催し、資料群の全容把握に向けた糸口を見出すことができた。夏季には、初年度の研究成果を広く公開する場として、現代史サマーセミナーとの併催による公開研究会「現代社会運動資料の課題と展望:「三里塚闘争」・空と大地の歴史館から考える」を開催し、国内のみならず国外からも研究者の参加を得て、「元小川プロダクション資料」を中心とした史資料のもつ学術的な意義を明確化する契機となった。 特定地域へのケーススタディも開始し、2018年12月から2019年1月に長野県における上映運動の経験者への聞き取り調査を実施して史資料の寄贈を受け、オーラルヒストリーと史資料調査を併用した調査も展開している。長野県におけるケーススタディをひとつのモデルとして、今後、国内各地へのケーススタディを行うことが可能となった。 研究プロジェクトの推進体制としては、歴史研究に携わる多様な分野の専門家によるプロジェクトチームを結成することができて、歴史学・アーカイブズ学・社会学の3分野の領域横断的な共同研究プロジェクトを順調に推進することができている。
【研究組織】研究代表者:相川陽一(長野大学)/分担研究者:新井勝紘(専修大学)、白井哲哉(筑波大学)、原山浩介(国立歴史民俗博物館)/研究協力者:今井勇(アジア歴史資料センター非常勤調査員)、森脇孝広(都留文科大学非常勤講師)、秋山道宏(明治学院大学国際平和研究所助手)、金子美佐子(千葉大学大学院博士後期課程)/アドバイザー:波多野ゆき枝(成田空港 空と大地の歴史館)
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度の推進方策としては、2018年度の研究成果を展開させるために、国立歴史民俗博物館や成田空港 空と大地の歴史館において資料整理調査会を着実に継続開催するとともに、「元小川プロダクション資料」をはじめとして、研究対象としている史資料の全体構造を把握することに注力し、史資料調査にもとづいた研究成果の発表をプロジェクトメンバー内で行った後に、成果の外部発信を行っていきたい。2019年度はすでに5月に当研究プロジェクトの全体運営会議を行っており、このような方針で研究プロジェクトは進行しつつある。 2018年度に調査を実施できた長野県における上映運動史資料の整理も進行させ、史資料調査とオーラルヒストリー調査を併用することが可能な条件を活かして、成田空港問題に関する記録映画の上映運動史研究のケーススタディとして成果を学会報告や論文等にまとめていきたい。 上記の研究プロジェクトを推進する過程で、史資料の収集・整理・保管・活用(展示含む)の手法が必ずしも確立されているとは言えない時期をもつ現代史資料(とりわけ現代社会運動史資料)への学術的アプローチ法の彫琢にも注力していく。その際、歴史学・アーカイブズ学・社会学の3分野の専門家と史資料の収蔵機関スタッフによる領域横断的な研究体制であることを最大限に活かし、成田空港問題にかかる史資料を具体的な研究対象としながら、現代社会運動史資料への領域横断的な研究アプローチ方法の開発も行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
2019年度には、「元小川プロダクション資料」の目録作成や重要資料の撮影と翻刻といった研究成果の創出のための基礎データの整備が本格的に進行できる見通しがあり、既存のプロジェクトメンバーに加えて、史資料整理にかかわるアルバイトスタッフ(日本現代史専攻の大学院生)が新たに加わり、史資料のデータ化が進展することが予想される。そのため人件費を追加で計上する必要を見越して、次年度使用額を計上した。次年度使用額は、主として、「元小川プロダクション資料」の目録作成や重要資料の撮影と翻刻のための人件費に充当していく見通しである。
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Research Products
(1 results)