2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K00971
|
Research Institution | University of the Sacred Heart |
Principal Investigator |
土田 宏成 聖心女子大学, 現代教養学部, 教授 (00364943)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 災害 / 日本近代史 |
Outline of Annual Research Achievements |
日露戦争終結直後に東北三県で発生した凶作への対応を論じた「一九〇五年東北三県凶作をめぐる国内外の動向」が雑誌『日本歴史』第866号(2020年7月)に掲載された。同凶作が社会問題のみならず政治問題にもなったこと、また国際的にも注目され、国内だけでなく、アメリカや中国など海外からも義捐金が寄せられたこと、翌1906年のアメリカ・サンフランシスコ地震に際しては日本が熱心に義捐金募集に取り組んだことなどを明らかにした。この凶作への対応は、明治43(1910)年大水害への対応に影響を与えている。 2020年7月11日、第40回土木学会土木史研究発表会において、「明治43年大水害への政府の対応について―内務省を中心にして―」と題する発表を行った。発表の内容は、『土木史研究講演集』Vol.40(2020年)に掲載されている。1910年8月東海・関東・東北一帯で水害が発生し東京でも被害が出ていたのにもかかわらず、桂太郎首相をはじめとする政府首脳が避暑や国内外の視察のため東京に不在で、交通機関の被災により帰京も遅れたこと、そのため政府の初動に遅れが生じ、それに対する批判があったこと、議員や財界人が協力し、政府とも連絡して大規模な義捐活動が行われたことなどを明らかにした。そのほか、2021年の第41回土木学会土木史研究発表会での発表に向けて、大正6(1917)年東京湾台風への対応に関する研究を進めた。 首都圏形成史研究会小研究会「首都圏災害史研究会」の会合を2020年9月13日、2021年2月20日にオンライン形式で開催し、明治43年大水害に関する共同研究と「首都圏災害史年表」の作成に関する打ち合わせを行った。研究発表会の開催に向け、各メンバーの研究テーマを設定し、研究を進めた。「首都圏災害史年表」については、ある程度作業が進んでいる幕末・明治期から公表をめざすこととした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止を目的として、図書館・史料館などが閉館や閲覧サービス制限などの措置を取っているため、研究を進めるうえで必要な参考図書や史料の閲覧が困難になっている。 「首都圏災害史年表」について、幕末から明治期までのデータを集成した明治編の改訂、さらに大正編の作成を進めたが、データのもとになる参考図書の閲覧が難しく、作業が進まなかった。各地への出張による史料調査も感染拡大防止の観点から延期している。
|
Strategy for Future Research Activity |
新型コロナ感染症流行の長期化を前提として研究計画を見直す。 インターネットを積極的に活用する。災害関係史料の収集について、インターネットを通じて閲覧可能な史料(各新聞社の記事データベース、図書館・史料館のデジタル化された図書や文書)を収集し、その史料の特性を生かした研究課題を設定する。例えば、新聞記事を利用してメディアの災害報道のあり方や防災政策に対する主張を分析する。 首都圏形成史研究会小研究会「首都圏災害史研究会」メンバーと共同で作成している「首都圏災害史年表」についても、利用に耐えると判断できる部分から、暫定的にインターネット公開し、新型コロナウイルス感染症の感染状況の改善を待ち、その後データの更新を図ることとする。まず比較的作業が進んでいる幕末・明治期から公開する。 同会メンバーとの明治43年大水害に関する共同研究についても、オンライン会議により感染拡大防止に努めながら研究会を続け、新型コロナウイルス感染症の感染状況が改善するまでは、前述のようなインターネットを通じて閲覧可能な史料を用いた研究を進める。
|
Causes of Carryover |
OCRアプリを使用することで、アルバイトによる入力作業を省くことができたことや、新型コロナウイルス感染症感染拡大防止の観点から史料調査のための出張を延期したこと、対面による研究会を中止したことによる。 史料調査のための出張や対面による研究会は、感染状況の改善を待って実施する。また、インターネットを通じた史料収集や、刊行された資料の購入などによって、コロナ禍において効果的な研究活動を実施したい。
|
Research Products
(2 results)