2021 Fiscal Year Research-status Report
戦時期タイにおける日本の宣伝機関の進出と活動:タイ・日・英語史料からのアプローチ
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18K00975
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Research Institution | Aichi University |
Principal Investigator |
加納 寛 愛知大学, 国際コミュニケーション学部, 教授 (30308712)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | プロパガンダ / タイ / 大東亜共栄圏 / 南進政策 / 宣伝機関 / 東南アジア / 他言語 / 文化政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、2019年度末以来のコロナ禍のため、当初予定していた海外出張が未だできておらず、史資料収集において大きな制約を受けることになった。この点、本研究計画の本質が、日本における史資料に並行して、日本の宣伝活動の一つの目的地としてのタイに保存されているタイ語史資料や、あるいは日本の宣伝活動に対峙したアメリカやイギリス側の史資料を比較しながら、日本の宣伝機関等の海外進出状況を立体的に描き出そうとするものであったことを考えれば、研究計画の遂行において本質的な部分に大きな影響を受けることになったと言える。 一方で、海外における史資料収集の制限のため、2021年度においては、主にこれまで収集した史資料の整理・公開と、日本国内における古書店からの史資料収集、さらに研究内容の書籍化に向けての準備に当てることになった。とくに、史資料の整理・公開については、「愛知大学貴重資料デジタルギャラリー」(https://arcau.iri-project.org/)が2021年6月に公開され、この間、本研究計画において収集・整理してきた対外宣伝雑誌等の史資料を広く活用できるようにした。 また、『SAKURA』などの対外宣伝雑誌を追加収集することもでき、今後の整理を経て上述のウェブサイトにおいて公開する予定である。さらに、陸軍被服本廠に本部を置いた「被服協会」の「大東亜共栄圏」における活動についても調査を進めることができ、同協会の機関誌『被服』の収集・整理にも努めることができたことは、2021年度の成果として挙げられる。今後、このような日本側の活動が、タイを含む地域にどのような影響をもたらしたかについても調査を進めていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍のため、予定していた海外出張がなかなかできなかったことによって、タイ国立公文書館所蔵資料等の閲覧・確認ができなかった点では、本研究課題の進捗は遅れていると評価せざるを得ない。その一方で、国内における史資料収集・整理は順調に進めることができ、さらにこれまで本研究計画において収集・整理した史資料のウェブサイトにおける公開ができたことは、本研究計画の大きな進捗といえる。また、新たに陸軍被服廠の活動についても視野が広げられたことは、当初予期していなかった成果でもあった。これらを総合すると、本研究課題の進捗については、「やや遅れている」と評価するのが妥当であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍の状況を見ながらではあるが、本研究課題の進捗が遅れている部分を集中的に推進するため、海外への出張を実現させ、とくにタイ国立公文書館所蔵資料の確認を行うことを最優先に考えたい。それに並行して、国内での史資料収集を進めるとともに、史資料の整理・分析をすすめ、さらに貴重資料についてはウェブサイトにおいて追加的に公開を継続していくことにより、研究成果を社会に還元していきたい。また、新たに判明してきた陸軍被服廠の動きなども含めて、日本の宣伝機関のタイにおける進出と活動について、研究書をまとめ、出版するための準備を進めていく。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため、当初予定していた海外出張ができなかったことによる。
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Research Products
(1 results)