2019 Fiscal Year Research-status Report
昭和戦時期から戦後期における技術官僚の政治史的研究
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18K00977
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
笹部 剛史 (若月剛史) 関西大学, 法学部, 准教授 (30625744)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 河川愛護運動 / 洪水対策 / 地域社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昭和戦時期から戦後期にかけて、内務省の土木系技術官僚がどのように地域社会を組織化していったのか、そのことが地域社会にどのような影響を与えたのか検討することに重点を置いた。 まず、国立国会図書館や東京大学の各図書館などで、内務省の土木系技術官僚が中心となって結成された治水団体や彼らが主導して展開された運動に関する史料調査を行った。その結果、①戦時体制下において河川予算の増額が期待できないなかで、土木系技術官僚の間で河川沿岸地域の住民を洪水対策に動員すべく各府県で河川愛護運動を展開する動きが見られたこと、②こうした動きは戦後になって河川予算が大幅に増額されるなかで後退していったこと、③その結果として、河川沿岸地域の住民の間で洪水対策に主体的に関わろうとする姿勢が弱まっていったこと、などの点を明らかにした。その成果の一部を、関西大学経済・産業研究所の第236回産業セミナー(2019年10月10日)で発表した(発表タイトル―「近代日本の洪水対策における『公助』と『共助』」)。 他に、本研究で得られた官僚制や地域社会の政治史に関する知見を活かしながら、明治後期から大正期にかけての学制改革の展開を政治史的に検討した論文(「学制改革問題の展開と立憲政友会」『日本歴史』861号、2020年)や書評(「書評 手塚雄太著『近現代日本における政党支持基盤の形成と変容』」『ヒストリア』278号、2020年)を執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
土木系技術官僚による地域社会の組織化については刊行物を中心に相当の史料を収集することができたと考えているが、本年度において予定していた彼らが残した原史料の調査は、年度末に発生したコロナ問題によって関東方面への出張を行うことが断念せざるを得ず、十分に行うことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度については、郵送による資料取り寄せや古書店からの資料購入などの代替方法も考えながら、当初予定していた昭和戦時期から戦後期にかけての技術官僚の政治的動向について、その全体像を明らかにしていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
本年度予定していた関東方面への出張が、年度末に発生したコロナ問題によって行うことができなかった。来年度は、出張ができない可能性も考えて、郵送による資料取り寄せや古書店を通じて資料購入などを行うことで対応したいと考えている。
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Research Products
(3 results)