2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K00979
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Research Institution | Nara University |
Principal Investigator |
吉川 敏子 奈良大学, 文学部, 教授 (40297172)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉川 真司 京都大学, 文学研究科, 教授 (00212308)
小山田 宏一 奈良大学, 文学部, 教授 (00780181)
鷺森 浩幸 帝塚山大学, 文学部, 教授 (40441414)
田中 俊明 公益財団法人古代学協会, その他部局等, 客員研究員 (50183067)
坂井 秀弥 奈良大学, 文学部, 教授 (50559317)
藤本 悠 奈良大学, 文学部, 講師 (50609534)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 日本古代牧 / 近都牧 / 大和国宇陀肥伊牧 / 室原馬養 / 摂津国豊島牧 / 河内国坂門牧 |
Outline of Annual Research Achievements |
30年度は補助事業の初年度として、研究代表者・研究分担者で手分けをして、近畿の古代牧の個別研究の調査・分析の積み上げに努めた。各自の研究状況は、随時研究会の形式で報告して、情報を共有し、積極的にフィールドワークを行った。現地研究者の協力を得て、近畿古代牧の推定地である大和国室原牧(奈良県田原本町)、摂津国豊島牧(大阪府箕面市)、大和国宇陀肥伊牧(奈良県宇陀市)、伊賀国広瀬牧・薦生牧(三重県名張市)を複数名で現地踏査し、現地比定の妥当性を確認し合っている。 また、東国・南九州の牧推定地を巡見した。『日本書紀』に「甲斐の黒駒」「駒ならば日向の駒」と歌われ、甲斐・日向が古代の良馬の産地と認識されていたことを踏まえ、山梨県(北杜市・南アルプス市等)と宮崎県(串良町都井岬)・鹿児島(志布志市・姶良市等)を巡見先とした。いずれにおいても、現地の研究者にご協力をいただき、地域ごとの牧の特質を認識するとともに、近畿の牧を相対的に理解することが可能となった。都井岬では放牧され自然繁殖を行う岬馬の実見と、現地職員への聞き取りにより、自由放牧による牧運営の環境条件などを学んだ。以上の踏査において得た知見の一部は、本年度の成果として発表した研究代表者の論文に関わり、引き続き各研究者が論文への反映に努める。 なお、各巡見先では現地研究者との活発な情報交換を行い、各地における牧研究への関心の高揚にも寄与できたと自負する。近畿の牧に留まらず、遠隔地の研究者との交流と協力の体制を築くことができたのも成果であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画の通りに進捗している。5で挙げた牧以外にも調査対象を広げて、研究を継続中である。文献史学班と考古学班が中心となって個別の牧の現地比定を行い、推定地に対する地理学班の助言を受けつつ、近畿の古代牧が立地した地理的環境のパターンを徐々に集積できてきている。文献史班のメンバーが取り組む、牧の運用や時代に伴う変容の検討も進めている。発掘調査を伴わない研究計画であるため、考古学班の取り組みには制約が大きいが、これについては、現地踏査において、近隣の遺跡の分布や特徴をも検討するなどして、検討や意見交換を行っている。今後は比定地周辺の遺跡の情報をより多く収集して、牧を含み込む各地域の人為の在り方を復元するよう、検討の範囲を広げていくことを課題とする。 関西圏内の現地踏査、東国・九州への巡見も計画通りに実施し、想定通り、あるいはそれ以上の手応えを感じている。巡見を機に、31年度における本事業のメンバーと鹿児島の研究者とによる大隅国野神牧の共同研究及び論文作成を企画することもできた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では地域ごとの研究班を分けたが、史料・資料の偏りなどもあり、現状では地域ごとの班分けは有効ではないと判断し、現在は各メンバーがアプローチ可能な牧を模索しつつ研究対象を選ぶ体制となっている。今後も、研究の成果を見込める牧を模索しつつ、順次研究を進め、最終年度に個々の成果を整理・総合することとした。 31年度は、朝鮮半島の統一新羅時代の牧を巡見する。乗馬の風習が5世紀頃に朝鮮半島から伝来したことは周知であるが、伝来の時代から時間を経て、両国の牧がいかなるバリエーションを見せるようになるのかを比較検討し、日本古代の牧の特性を相対化する。韓国においても、古代牧の研究は途についたばかりと寡聞しており、現地研究者と意見交換することで、相互の研究の活性化を図りたい。 大がかりな巡見は31年度までに実施し、助成事業最終年度となる令和2年度には研究成果の公開とさらなる課題検討のためのシンポジウムを予定する。それに向けて、近畿の古代牧の立地・運営形態などの特徴の類型化や、有効な研究方法の提示を行えるよう、成果の蓄積と整理を行っていく。
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Causes of Carryover |
遠隔地への実地踏査において、事情により参加人数が当初予定より少ない人数での実施となったため、残額を生じた。31年度は外国への巡見を予定しているが、日数を増やし、より充実した成果を得るために、前年度の残額を旅費として充当したい。
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