2019 Fiscal Year Research-status Report
植民地統治と朝鮮衡平運動――治安維持法と「衡平青年前衛同盟事件」
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18K00982
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Research Institution | Buraku Liberation and Human Rights Research Institute |
Principal Investigator |
竹森 健二郎 一般社団法人部落解放・人権研究所(調査・研究部), 企画・研究部, 非常勤研究員 (70747732)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水野 直樹 同志社大学, 人文科学研究所, 特別研究員 (40181903)
廣岡 浄進 大阪市立大学, 人権問題研究センター, 准教授 (30548350)
石橋 武 (朝治武) 一般社団法人部落解放・人権研究所(調査・研究部), 企画・研究部, 非常勤研究員 (80747733)
吉田 文茂 一般社団法人部落解放・人権研究所(調査・研究部), 企画・研究部, 非常勤研究員 (50747730)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 衡平社 / 白丁 / 朝鮮総督府 / 警察 / 共産党 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、前科研「日本統治下朝鮮における衡平運動に関する歴史的研究」(課題番号15K02885)において新たに発見された「朝鮮衡平青年前衛同盟事件関連資料」(韓国の国史編纂委員会および国家記録院所蔵)の検討を軸に、さらに関連史料の発掘し、もって植民地朝鮮における被差別民「白丁」(ペクチョン)の活動と日本による植民地統治の特質を明らかにすることである。 「朝鮮衡平青年前衛同盟事件」は、1933年光州において衡平社員を中心とした「共産主義運動」による光州警察署の治安維持法違反事件である。植民地下における治安維持法運用の研究はそれほど多くはない。植民地の治安機構は日本のそれとは別の独自の機構として存在しており、その具体的な運用を明らかにすることも期待される。 補助期間の2年目である2019年度は、引き続き、研究協力者と一体になって研究会を継続し、後述する現地踏査、史料集続編の編集会議、論集企画検討などを進め、また日韓研究会を開催した。研究会の報告を、一般社団法人部落解放・人権研究所の研究紀要『部落解放研究』第782号(2020年3月)で特集「朝鮮衡平運動史の研究(3)」を組み、駒井忠之、八箇亮仁、成周絃(ソン・ジュヒョン)、金日洙(キム・イルス)各氏の論文を掲載した。前年度に研究会報告をいただいた小川原宏幸氏の論文は別媒体に掲載された。 このほか、水野直樹が東北亜歴史財団主催「三一運動、臨時政府樹立100周年記念国際学術会議」で講演「平等と連帯―三一独立運動と朝日被差別民連帯運動―」をおこない、さらに「「闇光=神の粧」(1925年、朝鮮キネマ製作)の映画史的意味」(韓国映画学会『映画研究』2020年3月)で「白丁」が主人公として登場する映画について論じた。また朝治武が『韓国歴史ドラマの再発見-可視化される身分と白丁(ペクチョン)』(解放出版社、2019年8月)を公刊した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年5月29日(水)から6月3日(月)まで、大韓民国慶尚北道及び大邱広域市で朝鮮衡平運動に関する踏査(団長 水野直樹 団員8名)を実施した。なお、踏査の詳細は紀要『部落解放研究』第211号(2019年11月)に掲載した。 8月3日(土)、4日(日)両日、第6回朝鮮衡平運動史研究会【日韓研究会】を開催した。会場は大阪市内、HRCビル10階特別会議室。報告は次の通り。水野直樹(京都大学名誉教授)、割石忠典(芸備近現代史研究会会長)「朝鮮衡平運動史研究発展のために(3)-慶尚北道及び大邱、醴泉での踏査-」。ソン・ジュヒョン(崇実大学校HK研究教授)「天道教と衡平運動」。友永健三((一社)部落解放・人権研究所名誉理事)「水平社宣言と衡平社「主旨」との比較研究」。駒井忠之(水平社博物館館長)「水平社と衡平社-交流・連帯を巡る両社の認識と深淵-」。八箇亮仁((一社)部落解放・人権研究所会員)「日朝被差別民の連携模索と衡平青年前衛同盟事件」。朝治武(大阪人権博物館館長)「韓国ドラマ『ミスターサンシャイン』(一部)の鑑賞と解説」。 新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、2020年2月29日(土)に予定していた日本側の研究会は延期としたが、史料翻刻および史料集続編の編集は順調に進んでいる。 なお、さらに史料調査を進める中で、高麗大学図書館で、衡平運動にかかわる朝鮮語の新聞記事や雑誌、及び高麗革命党事件調書、呉東振事件調書(高麗革命党関係部分)、保寧衡平社騒擾事件調書(金応時ほか)等のあらたな史料が見つかった。とりわけ、保寧衡平社騒擾事件調書は、新聞報道されなかったため、まったく知られていない事件である。事件の内容や裁判過程などもよくわからない面があるが保寧の衡平社員に関する文書から生活の様子が垣間見える。新たに発掘した史料は、史料集続編には収録できないが、今後の研究に活用できるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究補助期間の最終年度となる2020年度は、引き続き、日韓及び日本側の研究会を行い、衡平運動及び衡平社、白丁にかかわる研究を深める。なお、2020年4月中旬に日韓研究会を計画していたが、新型コロナウイルス感染症の感染防止の観点から延期とした。なお、延期となった日韓研究会は新型コロナウイルス感染症の問題が終息した時期に開催する。 同様に、新型コロナウイルス感染症の流行が終息した時期に江原道及び忠清南道地域の韓国踏査を実施する。 『続・朝鮮衡平運動史料集』(仮称)を刊行するため史料調査等で収集した史料(日本語、ハングル)の翻刻・翻訳作業を引き続き手分けして行うと共に解題原稿の検討及び編集作業に取り組む。なお、現在のところ刊行時期は2021年3月をめざしている。また、史料集の総頁数は約800頁を予定している。 研究成果は、一般社団法人部落解放・人権研究所の紀要『部落解放研究』他に発表する予定である。さらに、2023年4月には衡平社創立100周年を迎えるので、これを記念する論文集の刊行を準備しており、その内容を引き続き検討する。
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Causes of Carryover |
2月末に研究会の開催を予定していたが、新型コロナウイルス感染症への対策として中止した。繰り越しは少額であるが、次回の研究会開催の際に使用するか、物品などの購入にあてる計画である。
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Research Products
(19 results)