2019 Fiscal Year Research-status Report
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18K00997
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
土口 史記 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (70636787)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 監察 / 御史 / 郡 / 岳麓書院蔵秦簡 / 秦律令 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、中国古代の簡牘資料に基づき監察制度の実態を解明することを目的とする。本年度はその一環として、地方監察に関わる官制研究の面で成果があがった。2019年12月に行った研究発表「秦漢時代の御史制度―郡監御史をめぐる問題」(アジア史連絡会第六回研究会、於下関市立大学)では、地方(郡)に対する監察を担った「郡監御史」の制度に関して、新出史料を踏まえた検討が不足しているという問題意識から、2017年公刊の『岳麓書院蔵秦簡(伍)』に収める「秦律令」を主に利用して新たな知見を提示した。すなわち、これまでよく知られていた「郡ごとに郡監御史を置く」という制度は、実際のところ一郡の内部に郡監御史を常駐させるものではなく、郡の外部から(時には複数の郡を管区として)御史を派遣し、監察に当たらせるものであったと結論づけた。この観点についてはさらに検証を加えたうえで2020年度に中国・武漢で開催される学会において口頭発表および論文として投稿の予定であったが、新型コロナウイルスの影響により延期となっている。 また御史とならぶ監察官である執法については、同じく『岳麓書院蔵秦簡(伍)』の知見を踏まえた研究成果を吉林大学において発表した(「秦代官制研究的新視点:以岳麓秦簡《秦律令》為中心」吉林大学古籍研究所学術講座)。 また本年度は地方監察の前提となる、地方官府の空間構造の復元にも取り組んだ。これについては台湾の国立中興大学(第八届出土文献青年学者国際論壇、2019年8月)などで口頭発表を行ったが、その内容の一部を「里耶J1出土“異処簡”初探」として論文化し、英文査読誌Bamboo and Silkに投稿、採用された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
監察官の一つである御史に関して独自の知見が得られたため、新出簡牘の活用が有効である点を示すことができた。その成果を公刊するにはなお至っていないが、2021年度に国際学会で発表を行うため、そこでの議論の結果を踏まえて公刊する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の中心史料となる岳麓書院蔵秦簡の報告書第6冊が近く公刊される予定である。そこでは本研究でも扱ってきた執法・御史といった監察官に関する史料増加が見込まれるため、今後はそれに応じた研究を進めることとする。
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Research Products
(7 results)