2020 Fiscal Year Research-status Report
フランス奴隷貿易と国際商業都市ナントの海運ネットワーク
Project/Area Number |
18K01021
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
大峰 真理 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 教授 (70323384)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | フランス奴隷貿易 / 国際商業都市ナント / 貿易商人 / 海運業者 / 港湾実業界 / さとうきび農園主 / 代理商 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、フランスによる奴隷貿易の進展と国際商業都市ナントによる海運ネットワークの構築との関連を明らかにすることである。とりわけ、(1)ビルバオ貿易従事者、(2)カディス貿易従事者、(3)ダンケルク貿易従事者について一次史料を分析し、彼らの実像と港湾実業界における配置を解明することに重点をおく。申請者はすでに、(a)アンティル諸島直行貿易、(b)アイルランド貿易従事者と両替商=銀行業者、(c)リスボン貿易従事者と薬種・繊維製品取り扱い商人という集団を分析・考察しているので、本研究で上記(1)(2)(3)の分野に関与する商人集団を実証的に抽出できれば、都市ナントによる海運ネットワーク全体を解明することが可能になると考える。 本研究の3年目にあたる2020年度は、Ⅰ一次史料の調査と収集、Ⅱダンケルク貿易の内実を可視化するための作業、を予定していたが、COVID-19感染症拡大の影響を受け計画通りには進められなかった。まずⅠについては、海外渡航が不可能だったのでアイルランドにある諸古文書館での資料調査ができなかった。可能な限りオンライン史資料を参照したが、17世紀~18世紀の史料のデータ化はまだ十分ではなく、目的を達成することはできなかった。またⅡについては、『船舶艤装申告書一覧』に含まれる記録情報のうちダンケルクを目的地とする船舶の抽出はできたが、論文を執筆完成させることはかなわなかった。理由は、2020年度初頭から急きょ必要となったオンライン講義と演習の準備・実施・運営に長大な時間を割かなければならなかったからである。 一方で、オンラインで入手できたフランス語史資料を手がかりに「17~18世紀アンティル諸島のさとうきび農園主と代理商」に関する新たな知見をえて整理することができた。この成果は、来年度執筆予定(2021年7月提出)である日本語論文の素地を形成する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年から現在まで続くCOVID-19感染症の蔓延は、海外史資料調査を完全に中断させる。また、例年とはまったく異なる形態での講義・演習の実施は長大な準備時間を必要とする。 こうした理由により、本計画の遂行に必要不可欠な作業は滞り、研究のための時間は確保できない。そのため、2020年度は研究計画の通りには進められなかった。 なお、今年度は当初の研究計画調書からも明らかなように、雑誌論文の公表および図書の発行を予定した年度ではない。したがって<次項10研究発表>のうちこれらの項目については調書通り「0」である。一方、学会発表(研究発表)については、いくつかの計画があったもののCOVID-19感染症蔓延初期であったために取りやめになったケースもある。そのため学会発表についても「0」となってしまった。 ただし、対面式研究集会の代替措置として実施したオンラインでの打ち合わせや、図書出版に関する全体準備報告会などを通じて、執筆予定論文の構想を具体的に表明したり意見交換したりできた。これらの成果は、多角的な視点に立つ研究の広がりを確信させ、2021年度寄稿予定の論文に活かされる。 また、2019年度までの研究成果がきっかけとなって学術雑誌への論文寄稿の要請も受けた(2020年2月9日)。この学術雑誌は2022年度に発行予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
海外の文書館に保管所蔵されている史資料を調査できないので、これからしばらくは引き続きオンラインで閲覧できるものを手がかりに研究を進めるしかない。一方で、これまでに蓄積してきた研究成果を綜合的に取りまとめ、若干の構成変更を試みながら著書の執筆発行に注力する。
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