2018 Fiscal Year Research-status Report
リンツ領邦学校から見る近世ハプスブルク君主国の統合に関する研究
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18K01029
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
石井 大輔 神戸大学, 人文学研究科, 学術研究員 (10588388)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 領邦学校 / ギムナジウム / イエズス会 / ハプスブルク君主国 / 上オーストリア / 貴族 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、領邦上オーストリアに存在したリンツ領邦学校を通じて領邦上オーストリアの発展やハプスブルク君主国の統合を検討する。2018年度は当初の研究計画に従い、以下の研究活動に取り組んだ。 ①ハプスブルク君主国における領邦学校(イエズス会ギムナジウム)や大学などの教育機関に関する研究動向を知るために、関連文献の収集と調査にあたった。特に、今回新たな取り組みとなる18世紀の君主国における教育や学校に関する文献に重点を置いた。これらの文献調査からは、17世紀以前では領邦諸身分やイエズス会が担ってきた学校運営に対して国が介入しようとしていたこと、その介入には限界があり、地域間の差異が大きいことが確認できた。 ②夏季に行ったオーストリアでの史料調査・収集は、オーストリア国立文書館におけるStudienhofkommissionに関する史料(AVA Unterricht StHK)と、上オーストリア州立文書館およびリンツ市立文書館におけるリンツ領邦学校関連史料を主な対象とした。これらの史料からは、ウィーン宮廷から見た領邦学校の位置付けや領邦上オーストリアにおける領邦学校の役割などが明らかにできると思われる。特に領邦学校の「生徒名簿」には17世紀半ばから18世紀末までの記録が残されており、今後の研究の基盤となる。さらに各文書館において、来年度以降のための予備的な調査も行っている。帰国後はこれら史料の検討に着手した。 ③本研究とも密接に関係する上オーストリア貴族を取り扱った論文「宗派対立期領邦上オーストリアにおける貴族身分の動向――「諸身分規定」による「古い貴族家門」の確立――」を『西洋史学』に掲載した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度に行った研究動向の整理や研究文献および史料の調査・収集によって、18世紀に至るまでのリンツ領邦学校を取り巻く環境について把握し、自身のこれまでの研究と合わせて、17・18世紀のリンツ領邦学校の概要を理解することができた。また、リンツ領邦学校に在籍していた上オーストリア貴族に関して、16世紀後半から17世紀前半までの動向を論文としてまとめた。以上の点から、2018年度の研究活動によって今後の研究を進めるための基盤を整えることができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度に収集した史料の分析を本格的に進め、ウィーン宮廷からの法令におけるリンツ領邦学校の位置付けやその変遷を明らかにする。この際、ハプスブルク君主国内のエリート教育にも射程を広げて検討していき、その研究成果を発表することを目指す。そのほか「生徒名簿」から領邦学校の生徒や卒業生の分析を進めていく。この点に関しては、2019年度以降の年度にも継続して取り組むこととする。また2018年の調査からは、リンツ領邦学校やリンツ市内の学校行政に関する史料が相当量に上ることが判明しており、その調査・収集を2019年度も引き続き行う。
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Causes of Carryover |
2018年度に購入を予定していた図書の納入が遅れたため、当初計画よりも使用額が少なくなった。この差額は2019年度分と合わせて、図書の購入に充てる予定である。
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