2019 Fiscal Year Research-status Report
リンツ領邦学校から見る近世ハプスブルク君主国の統合に関する研究
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18K01029
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
石井 大輔 神戸大学, 人文学研究科, 学術研究員 (10588388)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 領邦学校 / ギムナジウム / イエズス会 / 上オーストリア / 貴族 / ハプスブルク史 / 中・高等教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、領邦上オーストリアに存在したリンツ領邦学校を通じて領邦上オーストリアの発展やハプスブルク君主国の統合を検討する。2019年度は当初の研究計画に従い、次のような研究活動に取り組んだ。 ①昨年度に続き、8-9月にオーストリアに滞在して、追加史料の調査・収集にあたった。昨年度に調査しきれなかった部分、特に18世紀以前について調査を行った。 ②昨年度および今年度に収集した「宮廷学校委員会Studienhofkommission」に関する史料(AVA Unterricht StHK)をもとに、18世紀中葉以降のハプスブルク君主国における学校制度に関する法令とそれに関する議論を分析した。これらの分析から、マリア=テレジア期におけるギムナジウム改革が、啓蒙的な教育の実践を目指しただけではなく、「教育(機会)の選別」を行い、国家を支える人材の育成を考えていたことが明らかとなった。さらに、昨年度および今年度に収集した上オーストリア州立文書館収蔵のリンツ・ギムナジウム関連史料(Archiv des Lyzeums Linz, Archiv der Landdeshauptmannschafts)をもとに、リンツにおける中・高等教育の変遷を分析した。これらの分析から、ウィーン宮廷からの法令に従ってギムナジウムが整備されていったが、実際には様々な制約があったことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度に行った関連史料の調査・収集によって、予定していた史料を入することができた。 また、入手した文献および史料をもとに、ウィーン宮廷からの法令におけるリンツ領邦学校・ギムナジウムの位置付けやその変遷について、特にマリア=テレジア期に分析し、ある程度まとめることができた。さらにリンツにおける法令の受容に関しても知見をえることができた。これらによって、来年度以降に研究内容について発表する準備が整った。また、リンツ・ギムナジウムの生徒に関するプロソポグラフィー的な分析を進めており、今後の本格的な研究の基盤を整えることができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度はまず「生徒名簿」からリンツ領邦学校ないしギムナジウムの生徒や卒業生の分析を本格的に進めていく。マリア=テレジア期以降、厳しい「選別」にさらされながら、彼らがいかに領邦や君主国を支える人材となっていたかについて考察する。また、2019年度の研究成果を実際に発表していくことも予定している。 そのほか、2020年度にもオーストリアにおける史料調査を予定している。
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Causes of Carryover |
当初の予定よりも図書購入費の支出が少なくなったために、次年度使用額が生じた。 これらは翌年度以降の図書購入費にあてることとする。
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