2020 Fiscal Year Research-status Report
リンツ領邦学校から見る近世ハプスブルク君主国の統合に関する研究
Project/Area Number |
18K01029
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
石井 大輔 神戸大学, 人文学研究科, 人文学研究科研究員 (10588388)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 18世紀 / 「中・高等教育」改革 / ギムナジウム / ハプスブルク君主国 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、18世紀におけるリンツの「中・高等教育」改革に関して、その実態を明らかにしてきた。具体的には、オーストリア国立文書館と上オーストリア州立文書館に収められた史料を比較することで、中央と地方における「中・高等教育」改革の実施とその意図を検討した。その概要は以下の通りである。 ①マリア=テレジア期の「中・高等教育」改革によって、国家が学校を管理するための制度が整備されたが、その目的はあくまで生徒の身分的・数的制限であった。したがって、カリキュラムの変更は二次的なものであった。 ②リンツにおける「中・高等教育」機関として存在したリンツ・ギムナジウムにおいても、中央からの法令に従って改革が進められた。その際、領邦長官が当地の学校行政を管轄するようになり、ギムナジウムの学事長に対して指令を発している。このように中央から現場に至る指示通達の経路が確立されたことにより、カリキュラム変更はおおむね中央の意図通りに実施された。しかし、生徒の制限はほぼ実現されていなかった。ギムナジウム生徒名簿の調査から顕著な生徒数の減少は見られない。 ③イエズス会廃止(1773年)後には、地方側からの改革提言がなされている。その提言は地方における中・高等教育の必要性を説き、地方(領邦)や学校の自主性を求めていた。しかし、地方においても思想的な対立が見られ、この時点で提言が実現することはなかったが、後の時代に引き継がれることとなった。 なお、本研究に関連する今年度の研究成果としては、16-17世紀の忠誠誓約式に関する論考を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度に予定していた現地での史料調査を行うことが困難であったため、必要な史料や文献の入手できなかったため、若干の計画変更が必要となった。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は、前年までの研究成果の発表と18世紀前半に関する研究にあたることとする。可能であれば、現地での史料調査、特に領邦議会の議事録等を調査するが、困難な場合には入手済みの史料と文献でカバーする予定である。
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Causes of Carryover |
計画していたオーストリアにおける史料調査が実施できなかったために、差額が生じた。
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