2021 Fiscal Year Research-status Report
Culturally Hybrid Women on Trans-Pacific Women's Network
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18K01055
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
安武 留美 甲南大学, 文学部, 特別研究員 (10351751)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | トランスナショナル / グローバル / 環太平洋 / 女性 / 移動 / セトラーコロニアリズム(定住者植民地主義) / 教育 / 市民権 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、20世紀初め「資本主義の人道化」を目指した環太平洋地域の国際女性運動が、激化する階級闘争や台頭する人種・民族ナショナリズムとどのように向き合ったのか、特に1930年代の国際連携の試みと挫折、そして対立・紛争の諸相とどう関わったのか、環太平洋女性ネットワーク上に登場する文化的ハイブリッドな女性の活動に注目しながらその深層を明らかにすることを目的とする。 1928年代~1930年代、ホノルルで汎太平洋婦人会議(PPWC)を開催し汎太平洋婦人協会(PPWA)を組織した女性たちのトランスナショナルな連携が、第一次世界大戦後の新世界秩序構築の試みの中で高揚した環太平洋間の国際主義とどのように関わっていたのか、調査研究を継続中である。特に令和3年度は、PPWAの"father organization"と称される男性主導の汎太平洋同盟(PPU)、またこれまで男性組織として研究されてきた太平洋問題調査会(IPR)と女性活動家との関わりに注目した。その結果、1)ハワイの女性活動家たちがPPUと連携してPPWCを開催したのは、多文化化、多言語化するハワイ社会で急増するハワイ生まれの子供たち(すなわち生得権としてアメリカ市民権を持ち将来投票権を得る子供たち)の教育問題に起因すること、2)戦間期に、PPWA同様にホノルルで開催された他のPPUまたIPR主催の国際会議には、女性・児童のための労働保護法唱導者やERA(男女平等憲法修正条項)推進者など、多様な主張を持つ女性たちが参加していたことが判明した。 また、これまでの研究成果の一部を反映する論文が発表上梓された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
理由 コロナ禍のため、予定していた国外のアーカイブを訪問しての資料収集活動またその分析ができなかったためまだ全体の成果を発表する段階には至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度の研究成果の一部は、本研究に先立つ課題の成果(1820年から1930年頃までのハワイを中心とする米・布・日を結ぶ女性たちの連帯を俯瞰する著作)の中に取り入れていきたい。さらに、本研究が課題とする1930年代については、今後、1)日本の軍事化や大陸侵出を巡る女性たちの反応、2)大恐慌下の米ローズベルト政権で活躍したローズベルト夫人や女性官僚の動向、3)国際連盟に連携して国家間の国際協力に参加した女性たちの活動を明らかにし、4)それらが環太平洋地域の女性ー特に米・布・日の女性ーたちの連帯にどのように作用し、5)彼女らがどのように反応したのか、調査と資料収集を行いながら研究を進める。
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Causes of Carryover |
コロナ禍、宿泊を伴う調査・研究活動を控えたことが、助成金未使用の主な原因である。 令和4年度は、資料や書籍購入費、アーカイブ資料収集のための出張費、また英語論文のネィティブチェックのために使用する予定である。
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Research Products
(2 results)