2018 Fiscal Year Research-status Report
五条坂の窯業考古学的研究-多様性と「伝統」の現在-
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18K01073
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
木立 雅朗 立命館大学, 文学部, 教授 (40278487)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
余語 琢磨 早稲田大学, 人間科学学術院, 准教授 (00288052)
ナワビ アハマッド矢麻 早稲田大学, 會津八一記念博物館, 助手 (60802882)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 京式登り窯 / 石黒宗麿窯 / 石黒宗麿邸 / 石黒宗麿邸庭園 / 小川文斎窯 / 煉瓦製煙突 / 建築とオーラルヒストリー / 3D写真測量 |
Outline of Annual Research Achievements |
京都市内に残る京式登り窯6基(石黒宗麿窯・上田恒次窯・五条坂京焼登り窯・小川文斎窯・河井寛次郎窯・道仙化学製陶所窯跡)の実態を確認した。河井寛次郎窯でフォトスキャンによる3D写真測量の簡易実験を行ったところ、相応の成果を上げることが可能である見込みを得た。 そこで、京都精華大学の協力を得て、まずは最も小型で条件が整っていた石黒宗麿窯の3D写真測量を行った。あわせて邸宅と庭園の調査を行い、富山県射水市新湊博物館収集の石黒宗麿関連子写真の調査も行った。その成果の一部は京都精華大学ギャラリーフロールで開催された「石黒宗麿と八瀬陶苑」(2018年12月14日~1月12日)で公開した。 さらに、ホテル建設工事で傷んだ小川文斎窯と煉瓦製煙突が修復されることになったため、緊急的に3D写真測量を行い、修復工事の状況も適宜、観察した。その結果、煉瓦製煙突の下部構造が特殊であることを初めて確認できた。レンガ煙突とその構造の研究は十分になされておらず、今後、修復や再建が必要となる構造物にとって、大いに参考になると想定される。 また、道仙化学製陶所の職人長屋がホテル建設で解体される見込みになったため、それに合わせて構造調査を行い、職人長屋の間取りとその改修の過程を記録することができた。周囲の住民の方々の聞き取り調査も部分的に進めることができた。関連して五条坂にかかわる近現代文書(藤平陶芸文書、道仙化学製陶所文書)を整理し、デジタルアーカイブを始めた。 研究初年度であったが、京都ではホテル建設工事が急速に進んでいるため、それに対応しつつ、貴重な記録を残すことができた。本研究の必要性がますます高まりつつあることを実感させる1年であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定通り、2基の登り窯の3D写真測量を行うことができた。ただし、小川文斎窯は修復後の現状も記録する必要があるため、完全に終わらせられたわけではない。これは緊急の修復工事に先立つ測量であり、十分な計画を立てることができなかったためであり、致し方ない部分がある。 なお、関連する建築物や庭園の調査、関連書、写真も含めた調査を併せて行うことができた点は当初見込み以上であった。 それらを総合的に判断するならば、緊急調査にも柔軟に対応するなど、十分に計画を進めることができたと判断されるだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き、2つの登り窯の3D写真測量を行い、あわせて建築とオーラルヒストリー調査、近現代文書調査を進めてゆく。 ただし、近年、ホテル建設工事などによって、京式登り窯とその環境は大きく変動しており、それにも柔軟に対応しながら、調査研究を進めてゆかざるを得ない。
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