2019 Fiscal Year Research-status Report
五条坂の窯業考古学的研究-多様性と「伝統」の現在-
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18K01073
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
木立 雅朗 立命館大学, 文学部, 教授 (40278487)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
余語 琢磨 早稲田大学, 人間科学学術院, 准教授 (00288052)
ナワビ アハマッド矢麻 早稲田大学, 文化財総合調査研究所, 招聘研究員 (60802882)
田畑 幸嗣 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (60513546)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 京式登り窯 / 五条坂 / 五条坂南側町並散華の図 / 河井寛次郎窯 / 上田恒次窯 / 道仙化学製陶所 / 職人長屋 / 近代文書 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度も昨年度に引き続き、京式登り窯の3D写真測量を継続し、それに関わる民俗考古学的調査・建築学的調査をあわせて行った。 2019年5月、故伊吹弘氏による「五条坂南側町並散華の図」屏風等を調査し、写真撮影と作者についての聞き取り調査を行った。戦前における五条坂南側の繁栄と強制疎開の実態を詳細に記録した地域の記憶遺産であり、このような記憶遺産として重要な記録であることを確認した。2019年5月30日以降、嘉豊陶苑工房の建築調査と写真撮影・聞き取り調査を行った。民俗考古学的調査はその後も数回行い、聞き取り調査は2010年3月3日にも追加して行った。かつての道仙化学製陶所轆轤場であり、理化学陶磁器の轆轤場を京焼陶器工房が大きな改変を加えずに引き継ぎ活用していたことがわかった。2019年6月1-2日には日本文化財科学会大会において、昨年度3D測量を行った石黒宗麿窯の成果報告を行った。2019年6月3-5日には、河井寛次郎窯の3D写真測量を行った。現存する京式登り窯としてはもっとも大きい部類であり、残存状態も極めて良好であった。地形改変の状況も良好に確認できた。あわせて、周囲の聞き取り調査も行った。 2019年8月5日には石黒宗麿がかつて住んでいた蛇ヶ谷周辺の踏査と写真撮影を行い、6-7日には今熊野・K陶業の工房跡の略測と写真撮影、絵場の3D写真測量を行った。 2019年11月8-11日には岩倉木野・上田恒次窯の3D写真撮影を行い、あわせて所蔵文書の撮影を行った。2020年2月17日には道仙化学製陶所職人長屋の建築学的調査を行い、3月4日には長屋で工房を構えていた桐箱職人の聞き取り調査を行った。 その他、室内作業として、昨年調査した小川文斎家と道仙化学製陶所の近代文書の写真撮影を行い、その検討をはじめた。この文書調査によって、登り窯周囲の具体的な人の動きを詳細に復原することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
京式登り窯の所有者や史資料所蔵者のご協力によって順調に調査が進んでいる。しかし、そのため、3D写真測量のデータが膨大なものになり、その合成に時間がかかっている。また、規模の大きな河井寛次郎窯の撮影を終えたが、データ合成の結果、写真が不足している部分が判明したため、その補足調査が残されている。
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Strategy for Future Research Activity |
残す京式登り窯は、河井寛次郎窯の補足調査と、最大規模の五条坂京焼登り窯であり、達成できる見込みである。データ合成については分担者のナワビ矢麻氏が主に担当してきたが、遅れ気味であるため、今年度は可能な範囲で分担して進めたい。 新型コロナウィルス感染の影響で、補足調査の予定が立たなくなってしまったが、秋に集中的に行うことで解決したい。ただし、現在のような状態が続く場合、五条坂京焼登り窯の所有者も含めて、調査の許可を頂けるかどうかが大きな課題となる。
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