2022 Fiscal Year Research-status Report
ベトナム・メコンデルタにおけるグローバル果樹産地の形成過程および土地制度との関係
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18K01140
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
金 どぅ哲 岡山大学, 環境生命科学学域, 教授 (10281974)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 果樹産地 / グローバル化 / 認証制度 / ベトナム |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,新型コロナウイルスによる移動制限が一部解除され、ベトナムでの現地調査を再開し、主にラムドン省、フエ省、ホーチミン市近郊農村を対象に果樹産地の形成過程と熱帯果樹のサプライ・チェーンに関するフィールドワークを行った。現地調査の結果、近年のベトナムにおける果樹生産はグローバルサプライ・チェーンに包摂され規模拡大を追求する果樹専門農家と、庭先で稲作の稲作の補完的に果樹を栽培する小規模果樹農家とに二分化が進んでいることが確認された。そのうち前者は、ベトナム版農産物認証制度であるVietGAPの認証を受けているものも増えており、大都市を中心に展開されているスーパーマーケットを通じて新たなサプライ・チェーンを形成している。しかし、中にはVietGAPの認証を受けているにもかかわらず、小規模で農家の庭先で生産され伝統的な卸市場を通じて流通されるものと混ざって、慣行農産物として流通されているケースも少なくない。他方で、小規模生産農家が果樹生産合作社を立ち上げ、認証の取得に必要な資金調達やスーパーマーケットとの交渉力を確保しようとする水平統合の動きも確認され、ベトナムにおける果樹生産の多様な展開が明らかとなった。 一方、果樹産地のグローバル化に伴い、ラムドン省とホーチミン市近郊農村では農家の再組織化・階層分化が観察されたが、フエ省においてはそのような傾向が見られず、ベトナムにおける農村社会の階層分化は地域性を考慮し慎重に議論する必要があることが示唆された。ベトナムは比較的ルーズな村落組織を有し、社会主義土地制度と相まって、近年までほぼ均一な農家層で構成されていることが知られていたが、近年の商業的果樹生産の拡大により、農村社会における地域性が明瞭になってきたともいえよう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は依然として新型コロナウイルスによる移動制限を受けながらも、上述のような成果を得ることができた。しかし、メコンデルタの農村地域には依然として調査許可が下りず、コロナ以前に行ったメコンデルタにおける追加調査はできなかった。ただ、現地調査の結果、グローバルな農産物認証制度による小規模生産農家の水平的統合が進んでいることや果樹産地のグローバル化の地域性が確認できたことは注目に値する。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、メコンデルタの農村地域における現地調査が許可されれば、果樹産地への転換と土地制度との関係に関する追加調査を行う。そして、ベトナムの農業・農村がグローバルサプライチェーンに組み込まれる過程でローカルな土地制度が果たした役割について結論を導く。
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Causes of Carryover |
本年度に計画していた現地調査の一部が新型コロナウイルスの影響で実施できなかったため。新型コロナウイルスによる移動制限が撤廃されれば、本年度に実施できなかった現地調査を行う。
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Research Products
(3 results)