2018 Fiscal Year Research-status Report
Memory and Creation : Anthropological Study on the Reorganization of Civil Society through Art Festival
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18K01198
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
越智 郁乃 立教大学, 観光学部, 助教 (10624215)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川崎 修良 九州大学, 持続可能な社会のための決断科学センター, 講師 (60726884)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 芸術祭 / アートプロジェクト / 都市 / 記憶 / 公共空地 / 都市環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、現代日本及びフランスの地方都市での文化芸術による地域振興事業を事例に、現代の市民社会のあり方について人類学的に探究するものである。 具体的には、日本の新潟市と姉妹都市のフランス・ナント市において共に行政主導で開催される芸術祭(現代芸術の祭典と関連事業)を例に、公共空間での作品制作、観覧、管理の中で生じる「記憶をめぐる創造と実践」、すなわち作家と市民との関与や、一過性の観覧客の見るという行為を含みながら、いかに土地/人/出来事の「記憶」が選択・表現され、共有/拒否されようとしているのかを明らかにすることで、現代の市民社会がどのように形作られようとしているかを考察する。 本年度は、当該2地域の芸術祭をめぐる公共空間利用の実態と変遷、さらには作品制作の過程で当該都市のいかなる「記憶」が表現されているのかを調査した。具体的には、都市空間を活用して継続的に実施される芸術祭等の文化プログラムが都市の物的環境の整備・制御に与える影響を検証するため、(1)芸術祭の特殊状況において例外的に公共空地を活用する必要性が生じたときの制度運用状況、(2)都市空間を活用して継続的に実施される芸術祭等の文化プログラムが都市の物的環境の整備に与えた影響、(3)作品・プロジェクトの中に都市の歴史・文化や記憶がいかなる過程を経て組み込まれているのか、という3点の課題を設定し、各種計画、行政文書の検証と担当する行政官、芸術祭事務局や美術作家などの関係者へのインタビューを進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、現地における資料収集の質と量が、考察の鍵となると考えて、各年次1回以上の現地調査を計画した。当初の3か年計画では、1年目に都市空間の「利用の記憶」として芸術祭をめぐる公共空間利用の実態と変遷を調査し、それを踏まえて、2年目に作品制作の過程でどのような「記憶」が表現/捨象されるのかを調査する予定であった。しかし、初年度の調査において、現地コーディネーターと調査対象者との関係性が良好であったため、予想した以上に資料収集が進み、2年目に予定していた調査の3割程度を前倒して実施することができた。得られた資料の精査・分析には今後時間を要するが、総じて当初の計画以上に進展していると自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
研究対象とする新潟市、ナント市において、芸術祭及び都市整備に関連する文書、文献を入手し、芸術祭の都市空間と関連する部分についての整理を進める。整理によって得られた情報を元に、両都市の行政、芸術祭事務局や参加作家などの関係者へのインタビューを行い、検証に必要な情報を抽出する。 分担者の川崎は、入手した資料を元に両都市の芸術祭における都市空間の利用と、近年の都市整備の推移を関連づけ、時系列的な整理をすることで次年度により踏み込んだインタビューを行い、都市政策の視点からの考察を進める。 研究代表者の越智は、行政関係者や芸術祭事務局に加えて、市民がいかに参与しているかの調査を行い、記憶をめぐる創造と実践を考察するための資料を収集する。また、芸術祭関係者、当該地域の市民以外の存在である観光客に対して、芸術祭がいかなる形で開かれているのかについて明らかにするために、統計的な資料の収集・分析に加えて、芸術祭の参与観察を進める。また、分担者とともに資料を精査・分析し、調査報告をまとめる。
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Causes of Carryover |
初年度調査にむけて現地コーディネーターと情報を精査した結果、フランスにおける調査は、(1)夏の芸術祭時の参与観察を含む現地調査と(2)会期外の時期における芸術祭準備状況、関係者へのインタビュー(アポイントメントをとる段階になって、会期中には多忙、あるいは長期休暇中のためにインタビューに応じられないと答えた関係者が少なからずいた)の二期に分けて行う必要が明らかになった。よって当初の予算を調整した。平成31年度夏季と冬季の二度の調査を計画しており、翌年度分請求分と合わせて適正に執行する予定である。
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Research Products
(1 results)