2018 Fiscal Year Research-status Report
Theorising Global Administrative Law
Project/Area Number |
18K01227
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
中村 民雄 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (90237412)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | グローバル行政法 / イギリス法 / EU法 / 環境法 |
Outline of Annual Research Achievements |
この研究はイギリスのEU脱退(Brexit)の前後を比較し、イギリスとEUの各法制が、越境的な広がりを持つ共通の問題についてグローバル次元でいかなる法を形成するかを観察することを前提に、グローバル行政法の基礎理論を考えようとする。ところが観察の前提であるBrexitが、イギリス国内政治の混乱により、本研究期間の2年度めに入っても実現しておらず、先行きも不透明である(2019年4月時点)。 そこで研究の有意義な成果がでるように方法と焦点を再考する必要に迫られた。ゆえに初年度の環境法制の変化については、(1)現行の法制度が脱退協定により変化するものかどうかを検証すること。(2)イギリス独自の制度的工夫でグローバル行政法形成に直結しそうな展開を調査すること。(3)グローバル行政法の基礎理論の考察をEUが日本と締結した協定も手がかりに進めること(これはBrexit後のイギリスがEUと締結する協定のモデルとなりうる)。以上の3点に絞って研究を進めた。 (1)については、EUの環境法制度のうち、イギリスがもっとも実施において困難を抱えてきた大気汚染防止の項目について、脱退後は独自法制度で取り組むことが示唆されていることを把握した。 (2)については、全国規模ではないが、地方分権後のウェールズにおいて議会が、将来世代の利益を代弁して現在の世代の政策形成において考慮させる「将来世代オンブズマン(Future Generations Ombudsman)」の制度を、ウェールズ議会の制定法により創設したことに焦点をあて、2019年3月に当該オンブズマン事務局において法令やネット情報等では得られない具体的な活動の成果や活動上の困難や留意点、そして世界の類似の制度との協力の有無や協力の成果についてインタビュー調査をした。 (3)については、EU-Japan Forumにおいて研究発表をした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定していた研究計画に狂いが生じている。これはイギリスのEU脱退が2019年3月末に実施されず、先行き不透明のまま2019年10月末に延期され(またその後もどうなるか予想がつかない状況になっ)たからである。 経過期間を設定した脱退協定案は妥結したものの、批准が難航している。 また脱退後のイギリスとEUの将来関係の枠組み協定はいまだごく大枠しか政治宣言で示されていない。この状況では、Brexit前後の対比による法制度の変化は明瞭にはつかめないままである。
|
Strategy for Future Research Activity |
Brexitをめぐるイギリス国内政治の混乱により、EU脱退後のイギリスの法政策の将来像がいまだ暫定的であり、本研究期間の2年度以降、この不透明状態は大幅には改善しないものと思われる。 そこで、当初の研究計画では、2018年度に環境、2019年度に金融、2020年度に食品安全を取り上げることにしていたが、順序を入れ替え、2019年度に食品安全、そして2020年度に金融を取り上げることにしたい。 これは、金融分野がとくにEU脱退後は、イギリスが独自路線を最も取るであろうと思われる分野だからであり、それゆえに本研究期間のうち、Brexitが生じる可能性が高い最終年度に回すことには合理性があると考える。また、食品安全は環境問題とも関連があるため、連続して研究することにも合理性がある。
|
Causes of Carryover |
Brexitの混迷状況により研究計画を若干変更し研究対象を限定したため、図書購入費の一部に残額が生じた。2019年度に図書費として用いる。
|
Research Products
(5 results)