2018 Fiscal Year Research-status Report
再犯防止に心理学を活用するための実践的研究:絆を築く力を伸ばす司法心理士の育成
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18K01314
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤岡 淳子 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (10346223)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂東 希 敬和学園大学, 人文学部, 講師 (60388626)
毛利 真弓 広島国際大学, 心理科学研究科, 助教 (70780716)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 処遇効果評価研究 / 刑務所 / 司法心理学研修 / リフレクティング・トーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の目標は、「実施体制の整備と調査研究の開始」であり、①これまでの処遇実践(特にCBTとTC)の効果評価を行う、②対話の手法であるリフレクティング・トーク(RT)についてノルウェーで調査を行うとともに、③RTを用いて、実際の対話と研修を実施することであった。 ① 以下の論文と海外学会での報告を実施した。(論文)毛利真弓・藤岡淳子(2018)刑務所内治療共同体の再入所低下効果ー傾向スコアによる交絡調整を用いた検証ー『犯罪心理学研究』56(1) 29-46/毛利真弓(2018)司法における「治療的な」関係とはー臨床心理の視点から見た治療的司法『法と心理』18(1) 29-33/(学会報告)Fujioka, J., Mori, M., Bando, N. et al.(2018). Current situations and challenges of PSB-CBTin Japan 若者の性問題行動学会(NCSBY)/Mori, M. Fujioka, J. Bando, N. et al.(2018). Survey on therapeutic interventions on sexual violence in Japan.性犯罪者処遇学会(ATSA)/毛利真弓・藤岡淳子(2018)当事者から見た「犯罪行動変化を支援する治療的関係性」とはー刑務所出所者18名へのインタビュー調査からー『日本犯罪心理学会第56回大会』 ② 8月18日~26日にハルデン刑務所、アーケシュフース保護観察所、刑務官養成大学、アーケシュフース大学付属病院精神科、ヴァルドレス刑務所を訪問し、刑務所と保護観察所におけるRTの実施、養成大学における訓練、精神科での実施方法などについて調査した。 ③ 問題解決のために3回、研修のために6回、一般参加のシンポジウム形式で4回実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初、初年度の目標は、CBTグループとTCの処遇効果の実施であり、学会での報告は2年目の目標であった。しかし、研究実績の概要にあるように、既に国内外での学会での報告を行い、査読付き論文として、学会誌への掲載も行った。 ノルウェー刑務所での調査に基づき、RTの際に使用するTenkUtカード日本版を作成するべく、準備を行った。TenkUtカードとは、ノルウェー語で「考え抜け」という意で、受刑者たちが撮影した様々なシーンの写真をカードにして、対話のきっかけに使うものである。日本の刑務所出所者たちと写真を撮影し、カードとする写真を選択した。日本の刑務所内の写真については、CrimeInfoの協力を得て、「刑務所の『今』を知る写真展」に使用した写真を使わせてもらう内諾を得ている。 また、当初最終年度に行う予定であった。研修プログラムの試行を1年前倒しで実施できるよう準備を整えることができた。すなわち、司法心理学・犯罪心理学のテキストの文献調査、RTによる研修の実施体験、ノルウェーでの刑務官養成大学調査結果、専門家へのアンケート調査結果等を踏まえて、司法心理士養成のためのカリキュラム案を作成した。1コマ90分で6月~10月の月1回土曜日に3コマづつ行い、計15コマ、大学の半期、2単位に相当する程度である。以下の5単元よりなる;①司法・犯罪心理臨床の基礎、②アセスメント、③介入1~認知行動療法的アプローチ、④介入2~グループ・アプローチ、⑤介入3~ネットワーキングと協働、である。 研修プログラム試行のため、参加者を募集し、40名以上の応募を得て、そこから18名の参加者を決定した。できるだけ多様なフィールドからの参加者を選定し、警察、家庭裁判所、矯正、保護、学校教育関係から心理職、ワーカー職、教師などが参加予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度の研究終了時までに、再犯防止に心理学を活用する司法心理士の育成に有益なカリキュラムを開発し、そのカリキュラムを学習するために必要なテキスト、教材等を作成し、実際に研修を実施するという大きな方向性に変更はない。中間年である本年度の具体的な推進方策は以下の5点である。 1企画・準備し、参加者を募集・選定した「絆をつくる司法・犯罪心理実践研修」を試行し、その結果についてまとめて、カリキュラム、テキスト、教材等の原案を作成する。2研修試行参加者たちから得た研修ニーズなどに関するデータをまとめるとともに、司法臨床に関わる専門家たちのネットワークを作る基礎とする。3撮影し、選定した写真を印刷して日本版TenkUtカードを作成し、それを使用してRTを実施するとともに、研修参加者にも配布、使用方法の伝達をして、司法臨床場面での活用を進める。4当初は、グループにおける動機づけ面接を調査する予定であったが、昨年度の研究から、加害と被害がからむ司法臨床場面において、トラウマとトラウマ・インフォームド・ケア(TIC)に関する知見を導入することがより喫緊で重要な課題であるとみなすに至り、今年度は、ボストンで開催される世界トラウマティック・ストレス学会等でトラウマおよびTICの調査を行うこととした。5処遇効果評価についての報告を引き続き行うこととして、本年度は、メキシコシティで開催される第24回世界性的健康学会大会において、性加害行動変化のための治療的介入について報告する予定である。
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Causes of Carryover |
939円は、まとまった旅費等としては使いずらい端数であり、翌年度分の旅費に加算して使用することとした。 令和元年度は、研究費100万円のうち、30万円を共同研究者である、同志社大学毛利真弓准教授に配分する。 残りの70万円のうち、60万円をボストンで開催される世界トラウマティック・ストレス学会への藤岡および坂東希の旅費とし、10万円を研修試行実施および日本版TenkUtカード作成費用にあてる。
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Research Products
(7 results)