2019 Fiscal Year Research-status Report
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18K01355
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
野田 耕志 北海道大学, 法学研究科, 教授 (00344648)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | デュー・ディリジェンス / 証券開示規制 / コーポレート・ガバナンス / 取引の公正性 / ゲートキーパー / 引受証券会社 / 投資銀行 / 会計士 |
Outline of Annual Research Achievements |
会社法および金融商品取引法が適用される様々な局面において、引受証券会社、投資銀行、会計士などの様々なプレイヤーによるデュー・ディリジェンスが行われ、また、デュー・ディリジェンスは、取締役会や社外取締役が果たす責務に大きな影響を与える。 本研究では、主に、(a)金融商品取引法が規制する情報開示において実施されるデュー・ディリジェンス、(b)組織再編の局面において実施されるデュー・ディリジェンス、(c)コーポレート・ガバナンスの局面において実施されるデュー・ディリジェンスについて研究を進め、実施されるデュー・ディリジェンスがあるべき法規範にどのように反映されるべきかを探求するものである。 本研究は、各局面において行われるデュー・ディリジェンスの実務の詳細を具体的に調査、検討し、デュー・ディリジェンスに関係する各プレイヤーの役割を具体的に明らかにし、また、関係者間の連携のあり方を明らかにし、実施されるデュー・ディリジェンスがあるべき法規範にどのように反映されるべきか、裁判規範への影響、責任のあり方、あるいは、法制を研究するものである。 本研究は、第一次的に、比較法研究を実施するものである。これは、外国の法制度や理論状況を参考にすることで、わが国の法制度の位相を相対的・客観的に明らかにすることができ、あるべき法制度を探ることができるためである。 実務や法制度の単なる紹介にとどまらず、最新の理論状況を踏まえ、「あるべきデュー・ディリジェンス」、「あるべき各プレイヤーの役割・責任」および「法制度」の切り口で、外国法の比較に基づいた機能論的分析を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
会社法および金融商品取引法の各局面におけるデュー・ディリジェンスに関して、それぞれの局面における各プレイヤーの実務に関して豊富な経験を有する米国の状況を参照し、また、関連する米国会社法および証券取引諸法のルールを考察してきた。各プレイヤーに関してそのサービスの有効性に関する米国の理論を考察し、様々な局面ごと、開示やコーポレートガバナンス、あるいは、取引の公正性を有効とする規制・責任や体制、あるいは、論点について検討してきた。 そのうえで、我が国における関連規範や議論状況を論点ごとに整理し、また、実務における状況を踏まえて、法規範や当事者の責任のあり方、あるいは、あるべき法制を体系的に整理するべく研究を進めてきた。 (a)金融商品取引法が規制する情報開示において実施されるデュー・ディリジェンスに関しては、米国と比較して機能的な点で不明瞭な責任体系となっていること、さらに、近年の地裁、高裁の裁判例で示された論点、問題点を整理し、実務状況を踏まえたあるべき法規範や法制を明らにすることを研究してきた。 (b)組織再編の局面において実施されるデュー・ディリジェンスに関しては、取引の公正性を担保するためにどのような実務が行われているかを整理し、また、米国における議論状況を参考にして、投資銀行や会計士の役割の重要性、および、これらの者へ義務・責任を課すことの有効性を研究してきた。また、米国において、取引の公正性について株式買取請求権や信認義務にかかる訴訟ではどのように論じられているかを研究してきた。 (c)コーポレートガバナンスの局面において実施されるデュー・ディリジェンスに関しては、取締役会の役割と外部専門家との役割の分担、および、責任の所在の在り方を検討し、コーポレートガバナンスにおける取締役会評価を有効なものとするべく外部専門家の重要性を研究してきた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に実施する研究では、これまでの外国法の調査・研究、わが国における理論状況や実務状況の調査・研究を踏まえ、体系的に論点を整理し、論文としての公表を行い、また、諸大学の研究会などで研究成果(全部または一部)の発表を行うことを予定している。
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Causes of Carryover |
本研究の遂行に関連する書籍等の購入を随時進める予定であったが、購入のタイミングが年度をまたいでしまうことになった。また、前年度実施予定であった出張による研究調査(一部)について今年度行うことになった。なお、研究の進捗状況に遅れは生じていない。 今年度は、引き続き前年度からの研究を進め、成果を発表する等研究を発展させる予定であり、現時点において当初予定の通りの使用額となる見込みである。
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