2022 Fiscal Year Annual Research Report
Comparative Studies on Presidential Impeachment
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18K01437
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
米沢 竜也 神戸大学, 国際協力研究科, 部局研究員 (80804997)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
見市 建 早稲田大学, 国際学術院(アジア太平洋研究科), 教授 (10457749)
MASLOW SEBASTIAN 仙台白百合女子大学, 人間学部, 講師 (10754658)
舟木 律子 中央大学, 商学部, 教授 (20580054)
木場 紗綾 公立小松大学, 国際文化交流学部, 准教授 (20599344)
木村 幹 神戸大学, 国際協力研究科, 教授 (50253290)
杉村 豪一 常葉大学, 法学部, 准教授 (80739516)
秋田 真吾 神戸大学, 国際文化学研究科, 協力研究員 (90774604) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 大統領弾劾 / 民主化 / ポピュリズム / 政治的信頼 / 市民社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「新しい民主主義国」において、大衆の政治的不満が議会や政党といった既存の民主主義的制度に回収されず、大規模なデモ、さらには大統領弾劾へと展開しているという仮説の下、現代の民主主義の不確実性を各国の事例から分析する先駆的な試みである。 これまで「新しい民主主義国」で確認される政治的不信と直接的な政治参加の形態を比較してきたが、2022年度は分析対象の国(韓国、フィリピン、ブラジル、インドネシア)において、大統領選挙時における亀裂や争点の現れ方を比較分析した。韓国・インドネシア・ブラジルにおいては、政治的亀裂の特徴(宗教、階級・階層、イデオロギー)は異なるものの、韓国ではジェンダー問題、インドネシアではイスラームの世俗問題、ブラジルでは格差問題を軸にネガティブキャンペーンが展開され、政治的対立が分極化する様相がみられた。どの国においても、エリートと社会集団の間に構造的問題には触れずに市民の「怒り」を煽るポピュリズム的政治コミュニケーションの形態が共通していた。一方、2022年のフィリピン大統領選挙では、他の国とは異なり政治的対立は際立たず、ドゥテルテの信任を謳ったマルコス元大統領の息子であるボンボン氏が圧倒的勝利で当選した。従来の争点であった貧困が表面化しなかったのは、民主化後の政治を主導したリベラル派に対する不満が原因の一つと考えられる。「新しい民主主義国」の選挙では、既存の政治に対するネガティブな感情を動員する競争によって政治的信頼をむしろ損ない、政党による安定した利益表出にはつながっていないため、民主主義の不確実性は解消されない可能性がある。これらの研究成果は11月に実施された「東アジアの協調と民主主義に関する国際シンポジウム」で発表し、外部研究者を招聘して討論を行った。
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