2018 Fiscal Year Research-status Report
なぜブリュッセルはテロの巣窟と化したか――もう一つの「連邦制の逆説」?
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18K01441
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
松尾 秀哉 龍谷大学, 法学部, 教授 (50453452)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 対テロ政策 / 貧困政策 / 連邦制 / ベルギー / 治安政策 / ブリュッセル |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は主にベルギー(ルーヴェン、ブリュッセル)を訪問し、二次文献、資料の検索を行った。またその前段階として、東京の国立図書館所蔵のベルギー現地紙を閲覧し、主要記事、時代にめどを付けた。 特に今回はベルギーの治安政策(police policy)についてその歴史的変遷を検討し、申請段階で大きな転機と考えられた「連邦制導入」時点のみならず、その後のドゥトルー事件や、2000年代の新自由主義政権における行政改革の影響の可能性を見出した。これらは、次年度の調査で一層精査したい。 また、もう一方の反貧困政策は、管轄が(分権化により)地域政府に移っており、予想以上にブリュッセルの地域行政に負うところが大きいことも発見できた。ただし、この点も次年度以降の調査で精査する必要がある。 以上の調査の過程で、他の連邦国家との比較、ベルギーの連邦制の特徴をより詳しく把握する必要があることも痛感し、改めてヨーロッパの戦後政治の流れを基礎から見直して、季刊『現代の理論デジタル』での論考を得た。 また昨年10月の地方統一選でテロ対策は争点となり、移民・難民問題と絡んで、それ以降のベルギーの政局が不安定化しているため、テロの影響を見るため、収集した資料などをもとにして、その状況について概説を論じた。 さらに刊行が遅れていた『大統領制化の比較政治学』について、校正段階で本科研の資料をもとにデータの修正などを行うこともできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
大きく治安政策、反貧困政策の変遷を見てきたが、申請時に読んだ文献では見られなかったターニング・ポイントの可能性を見出したため、当初の予定より細かくそれぞれの制度史を見直す必要がでてきた。そのため資料、文献の調査、読み込みに時間を要している。また予期できなかったこととして、昨年10月の統一地方選以降、ベルギー政局が不安定化し、黄色いベスト運動、気候温暖化運動など社会運動が激化しており、その調査に追われたことにもよる(ただし、この点は、テロの影響の一つとして、本科研の成果に挙げることができる)。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に、極力早く収集した文献や史料を読み込んで概要を紀要ないし、現在執筆しているベルギー関連書籍に成果として挙げる。 第二に、現地にて、現地知識人、担当閣僚や官僚とアポイントをとり、テロの原因について意見を伺う(すでに8月23日に現地で会う予定はとれている)。 第三に、5月末の国政選挙の結果次第では、主にその後の政権交渉過程を追いかける。これを通じてテロの要因が見えてくるかもしれないし、異なる方向性に向かう可能性がある。
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Research Products
(4 results)