2019 Fiscal Year Research-status Report
なぜブリュッセルはテロの巣窟と化したか――もう一つの「連邦制の逆説」?
Project/Area Number |
18K01441
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
松尾 秀哉 龍谷大学, 法学部, 教授 (50453452)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 連邦制 / テロ / ブリュッセル / 新自由主義 / フェルホフスタット |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はベルギーの現地において、本研究の中心的な問いである「テロの巣窟化および発生」と「連邦制度」の関係について有識者のインタビューにより仮説を補完することが大きな課題であった。8月にベルギーを訪問して、ルーヴェン大学のDimitri Vanoverbeke氏や元首相のスピーチライターであり、中東研究者であるKoert Debuf氏へのインタビューを進めることができた。 両者とも単純に連邦制導入(やしばしば言われる経済格差と貧困)で巣窟化を論じることには反論する立場であった。 特にテロ研究について詳しい後者は、貧困ではなく、またベルギーの政治制度に問題があるわけではなく、テロリストになる側の心理学的要因に注目していた。彼によれば、中東からの移民(2世、3世)は、西欧の暮らしにおいてなんらかのアイデンティティクライシスに陥り、心理的退行が生じる。そのアンカリングとして、ムスリムの場合、イスラームに固着していくと言う。この議論自体非常に興味深いもので、彼がそれを論じた書物を翻訳して日本に紹介することとなった(現在翻訳中。コロナによって生じた行動制限によって進行が遅れているが、この夏には入稿したい)が、本研究においては、論破すべき先行研究となった。 彼らとの議論において有益だったのは、特に後者のクルト氏がスピーチライターを務めていた首相ヒー・ヴェルホフスタット時代の新自由主義的改革(国家公務員などの人員の整理、合理化)によって中央が行政能力を著しく落としている可能性があるという点である。ちょうどその時期は、9/11後の時期、つまりベルギーに国際テロ組織の拠点ができていった時期と重なる。この点に注目することで、より実証的な「制度(改革)とテロ対策」の関係について論じることができると思われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
この春休み中に先行研究のレビューを執筆することを目標としていたが、コロナ対応によって研究室への出入りの制限などがあり、少し遅れている。オンライン授業が落ち着き次第、ペースを取り戻したい。状況が変わるので落ち着かないが、最終年度は可能であれば、当時の政府の担当者(Koert 氏による紹介)によるインタビューを予定しており、そのエビデンスを持って、一気に持論を展開したい。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に、おおよそまとまってきた先行研究のレビュー執筆と方法論の整理。さらに制度の歴史的展開についてまとめておく。さらに最終年度だが、現地へ行って上記の当事者に新自由主義的改革の影響についてエビデンスを得ることが必須である。 万が一コロナの影響で現地へ行くことが叶わないのであれば、当時の新聞などを国会図書館(ただしベルギーの新聞があるのは東京本館のみ)において検索することになるが、それも叶わない場合、もしくはそれでは足りない(おそらく足りないことは事前のリサーチで把握している)場合には、次年度への繰越を申請して、現地でのインタビューを行うことで研究の質を下げないようにしたい。この点は状況に応じて、大学当局、当該部署と相談して進めたい。
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Research Products
(6 results)
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[Book] 教養としてのヨーロッパ政治2019
Author(s)
松尾 秀哉、近藤 康史、近藤 正基、溝口 修平
Total Pages
133-149、431-434
Publisher
ミネルヴァ書房
ISBN
978-4-623-08641-2
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