2021 Fiscal Year Research-status Report
なぜブリュッセルはテロの巣窟と化したか――もう一つの「連邦制の逆説」?
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18K01441
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
松尾 秀哉 龍谷大学, 法学部, 教授 (50453452)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ベルギー / テロ / 連邦制 / トライバル化 / 新自由主義的国家改革 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年は、ここまでの研究を通じて、1999年以降の自由党政権による新自由主義的改革と国家体制の変化が、ベルギーの「反テロ対策」に及ぼした影響を見極めるため、インタビューのため渡航準備を進めながら、先行研究を整理した。 また、後半になり、渡航が難しいこととなったため、それに関する二次文献を集め、現地新聞をネットなどで入る分だけでも整理し始めた。 その結果、「なぜテロが起きたのか」という単純な問いであっても、あるアクター(個人ないし集団)が「過激化」していく複雑な過程があり、そのうえで自爆テロが起きる、という二つの過程に分けられていた。そこでこれらを作業上の問いに分けて考えていくこと、また、多くの研究が前者(過激化)に注力しており、「なぜ自爆テロのスイッチを押したのか」という(ある意味)肝心な問いには触れられていないことを把握できた。 しかし、いずれにせよ、アクターに注目する限り、「過激化」する変数は非常に多く、過度な単純化は還元主義的で危ういとしても、それでもある程度の単純化をしていかないと、社会科学研究として使い物にならない。また、特に後者については、テロリストの(例えば心理的な)データを入手することは(自爆後に初めてテロリストと公にわかる可能性が高いゆえ)不可能に近い。よって研究の方向性として、「国家」に注目し、その対テロ策を見ていくことで、間接的にアクターの動向を考察する分析枠組みが必要であることを見出した。 成果としては、もう一年の延長を許された(感謝)ので、ベルギー渡航とインタビューの可能性を模索しつつ、やはりコロナ禍の影響で遅れている『ベルギーの歴史を知るための50章』以外に、紀要論文に先行研究の整理、分析枠組みの検討部分の執筆を始めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
渡航できず、最も重要な部分のインタビューできなかったことが大きい。対象が現職の大臣クラスでもあり、コネクションはあったが、さすがにこの多忙な時にオンラインインタビューは無理であった。今年度(おそらく最終年度)は、入手できる資料やデータ(知り合いのインタビュー等)、学会での交流のなかで情報を得て、限定的であっても解答できることを明確にして、紀要に投稿していくこととしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に、先方の都合なども配慮して、自由な渡航が可能であれば、渡航し、インタビューをとる。ただし、現在はウクライナの問題もあり、一層多忙であろう。 よって、次に、その側近などにメールで問い合わせる、などの方法、もしくは当時以降の現地新聞のインタビュー検索(継続中)からヒントを得たいと考えている。 先行研究と分析枠組みについては、2022年度の早期に紀要論文として公にする(1本目の原稿は欠けており、5月連休明けに入稿予定)。また、それを踏まえて出版計画を、2022年5月に出版社(ヘウレーカ)と相談する。その内容次第で、少し方向性が変わる可能性はある。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で渡航できなかったため。延長可能になるかどうかの決定までに、二次文献による情報収集を進めようと図書を発注し、差額がこの残額となった。 2022年度に渡航可能であれば渡航費の一部に、もしくは現状の成果でも報告の機会があれば会議の際の交通費、出張費、もしくは回想録などの書籍費用に充てたい。
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Research Products
(3 results)