2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K01460
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
北川 忠明 山形大学, 人文社会科学部, 教授 (00144105)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 石井菊次郎 / 国際連盟理事会 / 対仏協調 / 日仏二国間外交 / インドシナ通商問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず1920年代の国際連盟総会・理事会日本代表及び駐仏大使としての石井菊次郎の外交思想と行動を検討するための基礎資料として、『日本外交文書』、アジア歴史資料センター資料、国際連盟総会議事録(League of Nations Official Journal special supplement)と国際連盟理事会議事録(League of Nations Official Journal)等を用いて、石井の発言、公電、外交文書等のデータベース化を進めた。 これと並行して、国際連盟発足期の1920年から1924年にかけての石井の足跡を、上部シレジア国境画定問題、コルフ島事件問題などを中心に検討した。そして、石井が従来の日本の対英協調路線を修正して対仏協調にシフトさせていることと、その理由について検討を加えた。次いで、イギリス労働党政権、フランス共和派左派政権の誕生とともに、国際連盟規約の不備を是正し、集団安全保障と戦争違法化を促進しようとする動きが現れた1924年から1927年の時期については、ジュネーブ議定書策定過程、ロカルノ条約に見られる地域的集団安全保障、ドイツの国際連盟加盟・常任理事国入り問題、パリ不戦条約調印問題等における石井の対応を検討した。 また、国際連盟の外の日仏二国間外交については、フランス外務省外交史料館で現地調査を行い、ジュネーブ議定書の批准が進捗しない状況で浮上する日仏同盟をめぐるアリスティッド・ブリアン、ポール・クローデルたちフランス側と石井との議論に関する資料を調査収集し、これとインドシナ通商問題をめぐる日仏関係との関連についても研究の目処をつけた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画の第一の柱は、1920年の第一回国際連盟総会から1926年の第七回総会、同時期の国際連盟理事会における石井菊次郎の足跡を上部シレジア国境画定問題やコルフ島事件等の主要事件、ジュネーブ議定書策定、ドイツの国際連盟加盟と常任理事国入り問題等に即して辿り、石井の国際協調外交の特質を検討することであった。これについては、先述のように国際連盟総会議事録(League of Nations Official Journal special supplement)と国際連盟理事会議事録(League of Nations Official Journal)等を資料として、石井の発言等をデータベース化し、国際連盟における石井の行動と外交思想を再構成するところまで進めた。 また、フランス側の動向については、やはり国際連盟総会議事録と国際連盟理事会記録、フランス外交資料(Documents diplomatiques francais)等を資料として、レオン・ブルジョワとアリスティッド・ブリアンのほかエドゥアール・エリオ等の発言と行動について、伝記的著作をも手掛かりとしながら、再構成することを試みている。 さらに日仏二国間外交についても、先述のように、フランス外務省外交史料館で現地調査を行い、アリスティッド・ブリアン、ポール・クローデルたちフランス側と石井との議論に関する資料の調査収集を行い、日仏同盟とインドシナ通商問題に関する研究を続行している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は、まず国際連盟理事会・総会での活動を通して見た石井菊次郎の外交思想と行動の再構成を踏まえて、石井の外交の歴史的意義をより明確化するため、石井の後継者である安達峰一郎(1869-1934)の外交思想と行動まで検討範囲を拡大し、これに関する資料を収集し、分析する。 フランス側の動きについては、引き続きレオン・ブルジョワとアリスティッド・ブリアン、エドゥアール・エリオといった国際連盟派の思想と行動を検討するほか、日仏二国間外交に関連したフランス外交の動きを辿る。 さらに、石井と安達が退任した後、1930年代の日仏外交と国際連盟外交について、特に満洲事変期の石井の発言・行動について資料を収集し、国際連盟外交と日仏外交の終焉過程を検討する。この点については、日本の資料だけではもちろん不十分なので、フランス外務省外交史料館、国連ジュネーブ事務局での資料収集を行う予定である。 なお、本年6月15日に、「安達峰一郎生誕150年記念シンポジウム」が開催されるが、このシンポジウムにおいては、これまでの研究に基づいて石井菊次郎と安達峰一郎の国際協調外交の特質について報告する予定である。 また、本年度中に、国際連盟総会・理事会代表時代から満洲事変期にかけての石井菊次郎の外交思想と行動について論文を一編刊行し、来年度は、国際連盟総会・理事会日本代表時代を中心として第一次世界大戦期から第二次世界大戦期までの石井菊次郎の外交の軌跡を総括的に検討した報告書の作成を準備する予定である。
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Research Products
(1 results)