2019 Fiscal Year Research-status Report
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18K01460
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
北川 忠明 山形大学, 人文社会科学部, 教授 (00144105)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 石井菊次郎 / 国際連盟理事会 / 対仏協調 / 日仏二国間外交 / インドシナ通商問題 / 満州事変 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き、1920年から1927年にかけての石井菊次郎の国際連盟理事会日本代表・総会日本代表としての発言・公電・外交文書等のデータベース化を補足的に進め、その上で、外務省を退職後、枢密顧問官に就任(1929年)してからの石井の足跡を、特に1931年9月に勃発する「満州事変」への対応を巡る石井の言説と行動を中心に検討した。あわせて、日本の国際連盟脱退に至る過程における国際連盟を舞台にした日仏関係の変容過程について、特に、1932年1月の上海事件と3月の満州国建国とその承認をめぐる日仏関係の変容過程を、日本陸軍と内田康哉外相・外務省の思惑の違いやこれに関わる石井の行動、フランスにおける共和左派と右派との思惑の違いに着目しながら検討した。また、満州事変以後の石井の足跡についても追跡・検討し、以上の研究成果は論文「1930年代の石井菊次郎」(『山形大学大学院社会文化システム研究科紀要』、第16号、2019年)として公表した。 さらに、石井が国際連盟日本全権を退任して以降の、日本の国際連盟外交・対仏外交も追跡する必要があることから、安達峰一郎、佐藤尚武、杉村陽太郎、さらに芦田均にまで検討範囲を拡張し、検討を加えた。その成果の一部は、「安達峰一郎生誕150年記念シンポジウム」(2019年6月15日)で報告し、また「安達峰一郎と石井菊次郎1~5」、「安達峰一郎と芦田均―国際主義の系譜―戦争違法化と集団安全保障の夢1~4」として山形大学人文社会科学部安達峰一郎研究資料室ブログで公開している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3年計画の2年目を終了し、おおむね順調に進んでいる。 当初の研究計画の第一の柱は、1920年の第一回国際連盟総会から1926年の第七回総会、同時期の国際連盟理事会における石井菊次郎の足取りと連盟における日仏関係を、上部シレジア国境線問題(1921年)やコルフ等事件(1923年)等の主要事件、ジュネーブ議定書策定(1924年)、ドイツの国際連盟加盟と常任理事国入り問題(1926年)等に即して辿ることであった。これについては、資料収集も含め、ほぼ予定通り進んでいる。 第二の柱である石井駐仏大使時代の日仏外交関係については、フランス側の国際連盟政策と日仏外交政策の検討を、アリスティッド・ブリアンのほかエドゥアール・エリオ、駐日大使ポール・クローデルたちの発言と行動に関する資料を中心にして進めてきたが、これも1920年代まではおおよその見通しがつけられた。また、石井時代に次ぐ安達峰一郎駐仏大使・国際連盟日本全権時代はおよそ2年間の短期であるが、石井時代の外交成果を継承発展させた時期であることから、この安達時代の資料収集にも務めた。 しかし、1930年代の第二期幣原外交時代に、石井・安達のラインとは異なる吉澤謙吉が駐仏大使になって以後の国際連盟における日仏関係と日仏外交、満州事変以後のそれらの変容については資料的に十分ではなく、この1年間で可能な限り資料収集と検討を進める必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の最終年度であるから、1920年代の国際連盟総会・理事会での活動を通して見た石井の外交思想と行動の特徴および国際連盟を舞台にした日仏関係の展開、日仏二国間外交の展開を基軸にして研究成果報告書をまとめる予定である。そしてこの時期の対欧州外交の重要性をさらに明確化するために、石井の後継者である安達峰一郎(1869-1934)の外交思想と行動、さらに国際連盟外交・日仏外交にも関与した経験を持つ芦田均(1887-1959)の足跡に関しても、これまで研究成果として発表したものを基礎として再構成を行い、報告書をまとめることが目標である。 その際、1930年代の特に満州事変以後の対欧州協調外交派の動向の見通しをつけておくためにも、白鳥俊夫たち外務省革新派の動きや松岡洋右の外交思想と行動について検討を進める予定である。 また、1930年代におけるフランス側の対国際連盟政策と対日外交政策について、満州事変とアリスティッド・ブリアンの死去以後の変容過程にも『フランス外交資料(Documents diplomatiques francais)』等を活用して見通しをつけておきたい。
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Causes of Carryover |
3月に国立国会図書館および外交史料館において研究課題関係の資料調査と収集を1泊で実施する予定であったが、新型コロナウィルス感染症対応のため国会図書館および外交史料館が閉館になったことから、予定していた旅費の執行ができなかったものである。
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Research Products
(4 results)