2018 Fiscal Year Research-status Report
Studies in Mch'connection in the early twenty century
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18K01528
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Research Institution | Otaru University of Commerce |
Principal Investigator |
江頭 進 小樽商科大学, 商学部, 副学長 (80292077)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | Ernst Mach / Michael Polanyi / Karl Polanyi / Friedrich Hayek / 中曽根内閣 / 臨時教育審議会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、当該研究対象の一人であるハイエクの自由主義思想が日本国内でどのような形で利用されたかを、1980年代の中曽根内閣時の臨時教育審議会での議論を踏まえながら検討を行った。この課題はある思想家の議論が、国境を越えて伝播する場合に、どのように変質しながらも、表面的な整合性を維持するのかを考える場合の重要なサンプルとなった。本研究は、経済学説史研究としては現代政治史的な要素が強いため、当初予定していたオーストラリア経済思想史学会よりもより参加者が多く幅の広いSociety of Economic Historyのシカゴ大会(Royola University )にて中津川政宣との共同で報告された。 また、ハイエクのようなオーストリアの系譜を引く経済学者と英米系の経済学者の考え方の根本的な違いを比較するため、オーソドックスではあるがケインズおよびフリードマンとの情報概念および資本主義感の対照研究を行った。しかし、その過程で、この三者が明示的ではないが、近代的な民主主義を前提として議論を組み立てていることが明らかになった。だが、ハイエクにしろ、フリードマンにしろ少なくとも政治経済的なプロセスにおいて、民主主義を重視したことがない。これは彼らの議論の中に国家論が欠けていることとも関係する。これは現代中国のような市場の活性化と政治的な抑圧を同時に成し遂げかつ政治的権力をビッグデータとAIの時代に十二分に活用してるケースを考えれば明らかになる。本研究は、3月に名古屋工業大学で開催された進化経済学会での企画セッションにて報告された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
直接の課題であるErnst Machの思想的血脈の追跡は、今年は主にKarl&Michel Poranyiのガレリオサークルを中心に行った。ガレリオサークルで、彼らはMachの経験主義に深く感銘しながらも、それが実際に受けいられたのか、その後の彼らの議論の中にどのように反映されたのかは明らかではなかった。また、Michaelの暗黙的知識の議論は、Machの認知科学と共通性を示唆する部分はあるが、単なるテキスト比較を超えて実証的に検証することはいまだになしえていない。これは今後に残された課題であるといえる。 ただし、本研究の目的は、単に同時代の各研究者たちの直接的な相関を描くことではなく、20世紀初頭にオーストリア周辺で活動を始めた研究者たちの共通の基盤がMachをベンチマークにすることで明らかにすることにある。本研究はまだ多くの課題を抱えているが、全体的な方向性は見いだせているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度もこれまでの研究の中で一番手薄であると思われるPolanyi兄弟に関する資料収集と分析を続けていく。Karlに関して言えば実証的な研究をベースにした経済人類学研究の方法論の中にMachとのつながりを見いだすことができると考えている。対して、Michaelは出自が化学・生理学であり、一見すると物理学者であったMachとの親和性は高いように見えるが、そもそも実証主義が自然科学の中では当たり前であることを考えれると方法論的なつながりでは不十分であると思われる。そこで、今年はMichelとつながりのあったハイエクやポパーとの議論から周辺を埋める形で検討を進める予定である。 また、シュンペータの道具主義にかんしても検討を進める予定である。
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Causes of Carryover |
研究計画自体はおおむね予定通り進行したが,少額の残金が出てしまい消耗品等でも使うことができなかったため,次年度使用とした。次年度の研究計画遂行に影響を与える額ではないので,支出割合の大きい旅費に組み込んで使用する要諦である。
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Research Products
(4 results)