2019 Fiscal Year Research-status Report
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18K01643
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
坂本 和靖 群馬大学, 社会情報学部, 准教授 (40470108)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森田 陽子 名古屋市立大学, 大学院経済学研究科, 教授 (00326159)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 社会的規範 / パネルデータ / 就業行動 / 世帯内分配 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度(2019年度)は、慶応義塾大学パネルデータ設計・解析センター「消費生活に関するパネル調査」 (1993~2015年)を用いて、Akerlof and Kranton(2000)が提唱するIdentity Economicsにおける性差意識からもたらされる行動規範(Gender Identity)が有配偶女性の就業行動・家事行動に及ぼす影響について検証した。 検証結果をまとめると、第一に、妻は夫の所得を超えないように妻は就業を抑制している。第二に、妻の潜在的賃金が夫の賃金よりも高くなる場合、妻は就労を抑制する。第三に、夫婦合算の賃金に占める妻の所得割合が高くなるほど、妻の家事時間は減少するものの、所得割合が55~60%を超えると、だんだんと家事時間が長くなる。など人間行動に影響を与えるのは, 金銭的インセンティブだけでなく、人々が持つ「規範」意識であり、就業促進政策に対する文化的アプローチの重要性が確認された。研究成果は、Singapore Economic Review Conference(2019年8月5-7日開催)において、発表された(“Empirical Analysis of Social Norms and Inequality of Household Distribution in Japan”with Dr. Yoko Morita)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自己点検による評価の理由として、以下の点が挙げられる。 第一に、研究実績の概要欄に示したよう、令和元年度(2019年度)は、「消費生活に関するパネル調査」を用いた、性差意識による行動規範(Gender Identity)が有配偶女性の家計行動に及ぼす影響について分析、学会で研究発表し(2019年8月)、国際学術誌への投稿準備を進めている。これにより、日本のマイクロデータで、社会的規範が、有配偶女性の行動が規制され、世帯内における資源配分への不平等を招いていることが確認された。 第二に、これにとどまらず、国際比較をするべく、ドイツ経済研究所「The German Socio-Economic Panel (SOEP)、韓国・成均館大学東アジア研究所East Asia Social Survey Data Archive(EASSDA)の4ヵ国データを取得し、エディテイング作業を進めている。後者のアジアのデータ利用については、前述の学会報告におけるコメントを受け、新規に加えた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、慶応義塾大学パネルデータ設計・解析センターに「消費生活に関するパネル調査」の最新年度データ(1993~2018年分)の利用申請している(現在、利用許諾待ち)。新しいデータを加え、1990年代、2000年代、2010年代に区分することで、社会的規範(ジェンダー規範)が家計行動に与える影響の変容を分析できる。加えて、昨年発表した論文は投稿準備を進めている。 また、East Asian Social Survey Data Archive(EASSDA)より、4ヵ国のGeneral Social Surveyから構成される、East Asian Social Surveyデータを取得しており、データのエディテイング、先行研究のサーベイを進め、社会的規範が及ぼす影響の国際比較(日本、韓国、中国、台湾)を進めている。
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Causes of Carryover |
令和元年度(2019年度)に、実支出額が所要額を下回った理由は2つある。第一に、当初は、2~3月開催予定だった研究発表のための出張が新型コロナウィルス問題により中止となったため、出張経費の必要がなくなった。第二に、共同研究者がサバティカルによる海外渡航で、当初打ち合わせ開催のための交通費が不要になったことが挙げられる。
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Research Products
(2 results)