2018 Fiscal Year Research-status Report
わが国企業における業績測定システムとリーダーシップとの関係に関する研究
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18K01905
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Research Institution | Otaru University of Commerce |
Principal Investigator |
乙政 佐吉 小樽商科大学, 商学部, 教授 (20379514)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 業績測定システム / リーダーシップ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「どのようなリーダーシップの下でどのような特性を有する業績測定システムが実践されれば効果を生み出すのか」を問いとして、①業績測定システムとリーダーシップとはどのような関係にあるのか、②業績測定システムとリーダーシップとの関係がどのようにして成果に結びつくのか、の2点を実証的に明らかにすることを目的としている。本研究の目的を達成するために、初年度には、先行研究のレビューおよび事例研究を実施している。 研究実績として、まず、共著にて、慶應義塾大学ビジネス・スクールのケースとして、「アイリスオーヤマ(A)-事業発展の軌跡-」「アイリスオーヤマ(B)-新商品開発のための経営基盤-」「アイリスオーヤマ(C)-開製販のマネジメント-」を執筆した。アイリスオーヤマは、消費者の不満・不足を解消する「ユーザーイン」発想のもとで、次々と新商品の開発を行っている。ケースを通じて、業態メーカーベンダーを標榜する同社において、新商品比率5割以上を実現する上での基盤となっている、経営トップの役割、経営理念、経営戦略、組織構造、人材育成について検討することができる。 次に、共著にて、小樽商科大学のディスカッションペーパーとして、「動物病院におけるバランスト・スコアカードの導入プロセス」を執筆している。本ケースでは、北海道のA動物病院において、バランスト・スコアカード(BSC)がどのように導入・実践されたのかについて、トップ・マネジメントのリーダーシップに注目しながら記述している。ケースを通じて、トップ・マネジメントのリーダーシップのあり方に応じて、BSCは、コントロール・ツールにも、コミュニケーション・ツールにもなりうることを考察できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、「どのようなリーダーシップの下でどのような特性を有する業績測定システムが実践されれば効果を生み出すのか」を問いとして、①業績測定システムとリーダーシップとはどのような関係にあるのか、②業績測定システムとリーダーシップとの関係がどのようにして成果に結びつくのか、の2点を実証的に明らかにすることを目的としている。 初年度である本年度は、先行研究のレビューを通じた理論的枠組みおよび仮説命題の精緻化を研究活動の中心とした。先行研究のレビューに関しては、業績測定システムに関する文献に加えて、管理会計研究において経営トップのリーダーシップがどのように捉えられているのかつについて網羅的にレビューを実施している。 また、初年度から事例研究も展開している。調査企業の選定には次の4つの手順を踏む予定である。①トップのリーダーシップが顕著な企業に関する公表資料(2次資料)を収集する、②業績測定システムを中心として、公表資料に基づいた対象企業の事例を記述する、③記述した事例から調査すべき質問項目を導き出す、④対象企業にインタビュー調査の依頼を行う。 現時点において、上記手順の②の段階を終えた時点での成果として、ケースを3本執筆している。また、4つの手順を踏んだ上での動物病院の事例をディスカッションペーパーとして発刊している。 第2年度には、事例研究を本格的に展開していくことになる。先行研究のレビューと合わせて、本格的な事例研究を実施するための準備は着実に進んでいる。以上から、次年度以降の研究を進めるにあたって、本年度はおおむね順調に研究が進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、研究目的を達成するために、方法論的トライアンギュレーションの実施を計画している。具体的には、①先行研究の厳密なレビューに基づいた理論的枠組みを構築しつつ、②事例研究を通じて仮説命題の精緻化を行うとともに、③大量サンプルによるサーベイ調査を通じて定量的研究を定点的に実施する。研究を進めるに際しては、①および②のプロセスは繰り返し実施することになる。 本年度において、①の先行研究のレビュー、および、②の事例研究を実施している。とはいえ、③の質問票調査を実施を考えた際に、いまだ質量ともにデータが不足していると考えられる。方法論的トライアンギュレーションを実行するためには、理論的枠組みおよび仮説命題の精緻化をさらに進めていく必要がある。 したがって、第2年度においても、初年度に引き続いて、第一に、継続的に先行研究のレビューを実施する。第二に、調査対象企業の選定を継続しながら、事例研究を本格的に展開する。第三に、初年度に執筆したケースを研究論文へと発展させる。第四に、先行研究のレビューや事例研究から得られたデータをもとにして、質問票調査を実施するための下準備を行う。最後に、中間報告として、事例研究から得られた知見について国内の学会にて報告する。
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Research Products
(4 results)