2018 Fiscal Year Research-status Report
EUの循環移民政策と移住労働者の国籍変更戦略-イタリアの東欧出身者を事例として
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18K02011
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Research Institution | Wako University |
Principal Investigator |
中力 えり 和光大学, 現代人間学部, 教授 (50386520)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
定松 文 恵泉女学園大学, 人間社会学部, 教授 (40282892)
中島 崇文 学習院女子大学, 国際文化交流学部, 教授 (90386798)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 移住労働者 / 循環移民 / 国籍 / モルドヴァ / イタリア / EU |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近年EUで積極的に進められている循環移民の制度化の背景と実態について把握すると同時に、EU諸国で合法的に働くために、時には国籍を変更して移住する人々の移動戦略がどのように展開されているのかを明らかにすることを目的としている。 初年度である2018年度は、現地調査を2019年3月にモルドヴァで実施した。移民送り出し国であるモルドヴァの移民政策や同国出身者の移住労働の実態について、政府機関(厚生労働省、外務・欧州統合省)や国際機関(国際移住機関:IOM)、研究所、大学、NGOなどで、各関係部署の担当者や研究者へのインタビュー調査を行った。また、イタリアでの移住家事労働経験者にも、聞き取り調査を行った。 その結果、女性はイタリアをはじめとしたEU諸国で家事・介護労働に従事することが多く、男性はロシアやイスラエルで建設労働などに就く傾向があること、また、政府は循環移民を促進しようとしているものの、若年層を中心とした頭脳流出・人口減少に歯止めがかかっていないこと、離婚や置き去りにされる子ども、家族統合の問題も大きな社会問題となっていることなどが確認できた。重国籍に関しては、ルーマニアだけでなく、ブルガリアやウクライナなど、さまざまなケースがあることについて、また移住先の国籍取得の実態についても、知見を深めることができた。 現地調査に先立っては、研究会を3回開催し、先行研究の検討を行い、またイタリアの移住労働者の問題に詳しい研究者を招いて近年の動向について知見を得るとともに、意見交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に予定していた現地調査を順調に実施することができた。とりわけ、元モルドヴァ共和国ルチンスキ大統領首席補佐官の助力で、さまざまな関係者に聞き取り調査を行うことができ、多くの知見を得ることができた。 研究会も予定通り開催し、先行研究や近年の動向を検討する機会を、現地調査に先立ち設けることができた。 以上から、本研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目にあたる2019年度は、移住労働者の受け入れ国であるイタリアのローマで現地調査を実施する予定である。ローマには現在、イタリアの移住労働者の問題に詳しい専門家が滞在しており、その協力を得ながら調査を進めていく予定である。時期については、2020年3月を予定している。 送り出し国がおかれた状況についても、2018年度の現地調査で収集した文献や資料、聞き取り調査の結果を整理・分析し、引き続き研究を進めていく予定である。 研究会は2~3回開催し、役割分担にもとづいた研究成果を共有するとともに、ブルガリアの移民問題に詳しい研究者を招いて専門的知識の提供を受けることを予定している。また必要に応じて、メールで意見交換を行っていく。
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Research Products
(5 results)