2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K02012
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
長谷 正人 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (40208476)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊池 哲彦 尚絅学院大学, 総合人間科学系, 准教授 (10419252)
前川 修 近畿大学, 文芸学部, 教授 (20300254)
加藤 裕治 静岡文化芸術大学, 文化政策学部, 教授 (20633861)
川崎 佳哉 早稲田大学, 文学学術院, 招聘研究員 (50801792)
松谷 容作 國學院大學, 文学部, 准教授 (60628478)
大久保 遼 明治学院大学, 社会学部, 准教授 (60713279)
増田 展大 九州大学, 芸術工学研究院, 講師 (70726364)
角田 隆一 横浜市立大学, 国際教養学部(教養学系), 准教授 (80631978)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | メディア文化 / 孤独 / ヴァナキュラー |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、下記のように全体会合を行った(第4回が3月末に予定されていたが、コロナ禍のために次年度に延期された)。第1回は7月20日(土)に長谷正人の報告で、小林康夫「大地論序説」(『表象の光学』所収、未来社、2003年)を取り上げて議論が行われ、第2回は9月28日(土)に増田展大の報告で「生命科学とメディア・アート」をテーマに議論が行われ、第3回は2020年1月11日(土)に菊池哲彦氏の報告で、Geoffrey Batchen, "vernacular photographies." In Each Wild Idea, 56-80. Cambridge: The MIT Press, 2002を取り上げて,それぞれ議論した。 第1回では、アポロ宇宙船の飛行士たちが宇宙空間から地球を見た時の(ハイデガー的な大地から切り離された)神秘的な「孤独」体験が、パーソナル・コンピュータなど70年代以降のカウンターカルチャーの根底にあることが議論された。第2回では、そこから生まれた新しい生命思想と現代アートとの関係について議論した。 この2回の会合で、メディア文化における「孤独」のありようを極限の形において議論し得たと私たちは考えたので、第3回はそうした近代的な「孤独」を浮かび上がらせるために、その正反対の「ヴァナキュラー」(土着的)な写真文化(農家の居間に掲げられる先祖の遺影など)について議論することにした。ヴァナキュラーな写真文化の一つの形として孤独の文化もあるはずだ。 私たちの研究会は、社会学者と美学者の共同研究という形をとっている。「孤独」の文化を探究していくと、個人の「美学」の方向にたどり着くしかないので、「ヴァナキュラー」という概念を導入することで社会生活の「社会学」を導入し、改めてその接点を探る議論を展開していくことにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
メディア文化における「孤独」の探求を議論していくことの困難さに行き着いたため、議論の枠組みを「ヴァナキュラー」概念を導入することで作り直しているところである。またその最中に、コロナ禍で研究会が延期になったためやや最終年度の議論を急がなくてはならないと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
オンライン研究会の導入などによって、今年度は昨年度の研究枠組みの変更についてさらに議論を深めていきたい。もっとも、新しいキーワードとしての「ヴァナキュラー文化」は、参加研究者たちがこれまで押し進めてきた研究テーマなので、それほどの難しさもなく、議論に取り入れていけると思う。出版社(東京大学出版会)の編集者もすでに本研究に興味を示して参加しており、あと3年続けることができれば研究成果を出版できると考えている。
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Causes of Carryover |
2019年度中に出版予定だった、写真研究に関する書籍を購入する予定だったが、出版が遅れたため次年度にこの購入に充てる予定である。
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