2021 Fiscal Year Research-status Report
新指導要領実施に向けた高校の探究学習の再構築と学校改革
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18K02293
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
高橋 亜希子 南山大学, 人文学部, 教授 (90431387)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
和井田 清司 武蔵大学, 人文学部, 教授 (50345542)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 高校 / 探究 / 総合的な探究の時間 / 高大接続改革 / 新高校学習指導要領 / 学校改革 / 内発的 / 青年期 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、新学習指導要領への対応と高校の内発的な学校改革という研究テーマに関連して、(1)A高校の校内研究に焦点を当てたカリキュラム開発過程に関する論文執筆、(2)B高校に関する3度の再調査と学会発表、を中心に行った。 (1)に関しては、新学習指導要領への対応が、高校の内発的な学校改革の契機となりうるかに関して、私立高校A高校の2018年度の校内研究(部研究)の事例研究を通して考察した論文を発表した(髙橋, 2021)。 (2)に関しては、B高校を2021年5月、11月、2022年3月と3回に亘り再訪問と調査を行い、B高校の探究学習の実践と中高一貫校化について、内発的学校改革の視点から分析し、2021年8月に学会発表を行った。B高校は、進学校であるが地域の衰退により今後の方針が求められていた。その中で2013年に当時の校長を中心に今後の学校の方針に関するプロジェクトチームが組まれ、メンバーで話し合い、「探究」と「貢献」を軸にした中高一貫校という未来のデザインを描いた。2014年から総合的な学習の時間の改革を行い、教育委員会とも交渉を行い、そして2017年から探究学習を中心とした連携型中高一貫校となった。 和井田(2005)は内発的学校改革が生じる条件として、下記の4点を挙げた、①改革の権限を学校現場に位置付け、地域や学校の風土に適合した多系的な改革の方向性を奨励すること、②学校改革において教師以外の構成員の参加を検討すること、③キーパーソンのネットワークを主体として改革を推進すること、④相互作用を通した相利共生の観点。B校の改革は上記の4点とも当てはまっており、とりわけ①、③に特徴がある。その礎を形成したE校長が行ったことに焦点を当て、分析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は、内発的学校改革に関する事例分析論文を1編の発表と学会発表を1件行うことができた。2021年の目標は、B高校の探究学習の実践と中高一貫校化についての分析を行うことであったことから、研究としては順調に進行している。B高の学校改革は、地域の活性化、進学校の再建と探究学習を結びつけるデザインの創造性と共に、探究学習を支える人材資源・地域資源のネットワークの形成と、探究塾における自然科学分野の探究学習の優れた支援がある。ネットワークの形成については、キーパーソンであるE氏とF教諭に聞き取りを行い、当時に関する情報を得ることができた。探究塾も2回訪問し、生徒の調査に同行したりなど学習の様子に触れることができた。また3月には校内のシンポジウムと発表会に参加し、B校全体の生徒の学習の様子に知ることができた。 他に、高校生の探究学習を通した成長に関して、髙橋(2021)「高校生は学校外の経験で何を得るか:意味を創る学び」において、4つの実践報告(生徒会の学校外での活動、教科学習のフィールドワーク、調査活動に基づく奨学金制度の訴え等)の内容を手掛かりに、高校生が学校外での経験において、感情が動く体験をし、それを基に自分自身の意味を創る過程を分析・考察を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は研究の最終年度として、第1に、B校の事例の論文化を行う。 第2に内発的学校改革の観点から、A校とB校の2事例の共通点、相違点等の比較分析を行い、内発的学校改革についての整理と提言を行いたい。2校とも、トップダウンでなく、構成員が参加し話し合う機会があること、また、その機会を形成するキーパースンの存在が学校改革に大きく寄与している。そのような点について、内発的発展の理論と照らし合わせて検討したい。 第3にスクール・ミッション、スクール・ポリシーと、本研究の内発的学校改革の相違について新たに検討を行いたい。2021年度に発表された文部科学省の「令和の『日本型学校教育』」答申には高校におけるスクールミッション・スクール・ポリシーの義務化が盛り込まれた。スクール・ミッションとは「各高等学校の存在意義・社会的役割等の明確化」を指す。スクール・ポリシーとは「各高等学校の入口から出口までの教育活動の指針」を指し、育成を目指す資質・能力に関する方針,教育課程の編成及び実施に関する方針,入学者の受入れに関する方針の3つの方針を総称するものである。A校、B校とも自校の存在意義を再確認、再検討し、目指す生徒像、カリキュラムの検討を行っており、内容としては似通っている。しかし、動機の切実さや出発点については大きく異なっている。上からではなく、内発的な学校改革の契機とそれをどのように支えうるかについて、スクール・ミッション、スクール・ポリシーとの比較からも検討を行いたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により、学会発表による出張、学校調査などを実施することができなかったため、2022年度にこれらを実施する。
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Research Products
(7 results)