2018 Fiscal Year Research-status Report
在外教育施設の教育・運営の実態調査:学習指導要領改訂時の課題と遠隔討議による改善
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18K02391
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Research Institution | Miyagi University |
Principal Investigator |
金子 浩一 宮城大学, 事業構想学群(部), 准教授 (10367419)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 在外教育施設 / 日本人学校 / 補習授業校 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は,文献調査,聞き取り調査を進めつつ,遠隔講義の草案の検討を行った。 文献調査では,在外ならではの教育を行うだけでなく,在外だからこそ気づく日本の特徴を考察させる授業実践があることもわかった。また,補習授業校だけでなく,日本人学校(特にアジア)においても,両親の一方が外国人である児童・生徒が増えてきていることがわかった。 国内での元派遣教師(帰国済み)への聞き取り調査では,規模の相違による利点や課題について聞くことができた。大規模な学校は授業料などある程度の収入が見込め,施設の充実なども自己負担で行いやすいが,小規模校では地元日系企業の寄付などに依存し,予算の自由度が低い。逆に教育面では,小規模校では社会科見学など実施しやすい一方で,大規模校では児童・生徒の収容可能性なども含め障害が生じやすく,それぞれ一長一短があることが分かった。 海外での聞き取り調査では,欧州の在外教育施設を訪問し,工夫や課題について聞き取った。いくつかの大都市では,日本人学校と補習授業校の双方が併設されている。その場合,いずれを選択するか悩む家庭も存在し,また経営の面からは両校が競合関係にもなりうる。いずれ,日本人学校からの巡回指導だけでなく,補習授業校での国際児への教育指導のノウハウの伝達も必要であり,両校の強みの共有が強化されなければならない。 遠隔講義の草案の検討では,実施した内容(需要と供給に関する模擬取引)について,改めて物理的課題も含めて分析した。実施校との事前打ち合わせは不可欠であったが,講義実践の際に生じうる課題や内容のポイントについて事前に把握できるメモの作成があれば,これらの負担は軽減しうる。そのため,講師向けの資料などについて検討し,日本語を学びながら他教科も学べる工夫を凝らしつつ,次年度の遠隔講義に活用することにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成30年度には,研究協力者との打ち合わせが当初予定していたほど綿密にできなかったため,やや遅れた状況にある。遠隔講義で日本語を学びながら他教科も学習できる手法について,実践例を同時に見ながら議論することができなかった。令和元年度には対面での打ち合わせを予定しており,これらの遅れを取り戻す予定でいる。
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Strategy for Future Research Activity |
訪問調査については,海外での調査を継続して行う。補習校については,特に派遣教員の有無が教育面にも運営面にも影響してくる。児童・生徒総数が100人以上であっても派遣教員が不在の学校もあり,どのように運営を工夫しているか,どのように授業研究を実施しているかなど確認する。 6月にはドイツで開催されるENJA第9回大会(欧州日本ネットワーク)においてこれまでの研究成果を発表する機会を得ている。欧州の複数の補習校が参集し,複数校間で同時に意見交換ができる貴重な機会となるため,これまでの単一校訪問ではできなかった情報交換・共有を進める予定である。 遠隔講義については,実施しながら物理的な問題を把握していく。在外では,日本人学校,補習授業校,継承語学校とそれぞれ目的の異なる学校が存在する。各々の到達目標も勘案し,どのように日本語学習と他教科の学習を連結させるか検討する。 また,研究協力者との打ち合わせの頻度を増やすほか,共同で国内の聞き取り調査も実施予定である。話し合うだけでなく,現場で一緒にインタビューする中で見つかる疑問点を解消し,令和2年度以降の各自単独の調査で内容や質の差異が生じないように努める。
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Causes of Carryover |
研究協力者との対面での打ち合わせが当初予定より実施できなかった。また,国内での聞き取り調査も当初予定ほど多く実施できなかった。これらにより次年度使用額が生じたが,これらは令和元年度以降に旅費として利用していく。
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Research Products
(2 results)