2022 Fiscal Year Annual Research Report
On social distribution of the discipline/socialization discourse and the reproduction of social stratification
Project/Area Number |
18K02406
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
高橋 均 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (30561980)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 文化的再生産 / 家族の教育戦略 / 社会化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の仮説として、2点を指摘できる。第1点目として、「叱らないしつけ」「子どもの考え・意見を尊重し、受け入れるしつけ」を称揚する言説が、今日の支配的なしつけ言説としてたち現れている。第2点目として、質問紙調査に基づき、今日の支配的なしつけ言説が、新中間層の保護者に専有的に配分され、「受容型・子ども理解型のしつけ」が実践されている。 研究期間全体を通じて、1945年から2022年にかけて生産された、しつけに関するテクストを収集し、データベースを作成した。各年代区分(10年刻み)のしつけ言説の布置状況を分析した結果、いずれの年代区分においても心理学の知を基盤とした、「子どもの目線に沿う」「子ども個人の心・感情に寄り添う」「子どもを叱らない」といった言表によって編成された言説が支配的位置を占めていることが明らかになった。 最終年度においては、政令指定都市在住者を中心に、保育園児・幼稚園児・小学生の保護者を対象としたWeb調査を実施し、約2000の標本を回収した。データ分析の結果、保護者が採るしつけの様式として、「精密コード型」「制限コード型」「個人本位型」の三つのしつけの様式が析出されたが、命令的な統制を基調とする「制限コード型」のしつけ様式はSES(社会経済的地位)の下位層において採用される一方、子どもの受容や感情の理解を基調とする「精密コード型」「個人本位型」のしつけ様式はSES上位層において採用されていることが明らかとなった。 一連の調査・分析より、①今日、子どもを受容し、理解するしつけ言説が称揚されていること、②「受容型・子ども理解型」のしつけは、SES上位層の保護者に受容されていること、③親子間での精密化されたコミュニケーション様式が、新中間層のとくに上位層においてみられ、しつけ様式には社会階層間で差異があること、以上3点が示唆される。
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