2019 Fiscal Year Research-status Report
The development for Trauma-Informed Care/System against childhood sexual assault
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18K02438
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
野坂 祐子 大阪大学, 人間科学研究科, 准教授 (20379324)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 子どもの性行動 / 性的発達 / トラウマインフォームド・ケア |
Outline of Annual Research Achievements |
子どもへの性暴力を中心とする小児期トラウマの理解と支援体制の構築をめざし、性的虐待等の高リスク児童が生活する児童自立支援施設と支援学校を主なフィールドとして調査と介入を実施した。海外での資料収集のほか、これまでの取り組みの論文化を行った。 1)児童自立支援施設(3施設)の職員を対象としたヒアリング調査及び質問紙調査(各 n=110):性的虐待を主な理由として措置された入所児童への対応状況と職員のストレスについて把握し、性的トラウマに特徴的な性行動化と対人関係の持ち方等を抽出した。また、業務による職員と組織全体へのトラウマの影響に関して、管理的立場にある職員(n=5)と心理職(n=7)へのヒアリング調査を行い、トラウマケアを行うことで生じやすい職員間のトラウマティックな集団力動等が確認された。これらのデータは、次年度も引き続き収集して分析を続ける予定である。 2)支援学校における性暴力(生徒間の性問題行動を含む)の事例と教員の対応に関する質的データを収集した。障害特性や発達段階を考慮した対応を検討し、教員との協働によって学校での取り組みをトラウマインフォームドケア(TIC)の観点からまとめ、学校用の手引書を作成し、科研の成果物としてweb上で公開した。 3)米国BostonのTreatment Innovationsでのトラウマケアに関する研修及び国際トラウマティックストレス学会(ISTSS)への参加を通して、小児期逆境体験(ACEs)の評価とTICに基づくケアに関する情報を収集した。また、国内外の研究者とのネットワーキングを構築し、情報共有を続けている。 4)昨年度までの科研の成果について、論文及び単著にて公開し、子どもへのトラウマインフォームドケアとシステムについての啓発を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
すでに構築された研究協力機関とのネットワーキングにより、調査への協力が得られやすく、ヒアリング調査及びアンケート調査、児童自立支援施設と支援学校での定期的なケース検討などを概ね予定通り実施することができた。また、初年度からの取り組みの一部を学校用の手引書や出版物等で公開することができた。 一方、研究対象として含んでいる幼児の性行動調査は、調査協力機関の都合により年度末の実施が計画されていたが、新型コロナウイルスの影響で乳児院と保育園(計3ヵ所)への訪問調査が延期された。次年度に向けて再調整する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画はおおむね予定通りとし、大きな変更はないが、新型コロナウイルスの影響によって延期された乳児院や保育園での調査の再調整などが必要である。状況によって、訪問調査(フィールドワークを含む)をアンケート調査や電話でのインタビュー調査に変更するなどの修正が必要かもしれない。 最終年度の推進方策は、下記の通りである。 1)幼児及び児童の性的発達の様相の把握;これまでに収集したデータの分析結果を第一報として論文化するとともに、追加データを集積していく。調査対象者を拡大し、子どもの性行動に関するデータとそれに対する職員の懸念や対応について、量的及び自由記述データを収集し、分析を行う。 2)低年齢児や発達特性・障がいのある子どもへの心理教育のあり方のレビューとマテリアル開発;今年度は障害のある思春期の子どもに関する学校向け手引書を作成したが、さらに対象児の年齢を広げ、幼い子どもを対象とした心理教育の内容を検討する。心理教育はトラウマインフォームドケアの実践における重要な要素であり、子どもと養育者に対する情報提供と基本的な養育指針(ペアレンティング)は介入の基本となる。子どもの性や性行動に対する養育者(保護者や保育者、施設職員等)の意識や態度も子どもへの対応に直接的・間接的に影響することから、養育者支援の視点から検討することが有益と考えられる。レビューや実践に関する論文化を中心に行う。 最終年度であるため、これまでの調査を補完し、多面的に検討することを目的に、調査対象者の拡大と作成したマテリアルの評価を重点的に行うこととする。また、成果のまとめと公開を積極的に行う予定である。
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Causes of Carryover |
年度末に新型コロナウイルスの影響により調査が延期になり、調査内容を一部変更したため。
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Research Products
(15 results)