2018 Fiscal Year Research-status Report
イギリス現職教育にみる文学の省察的読みの力を育む対話型小中連繋学習指導プログラム
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18K02620
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
松山 雅子 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (50173927)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | イギリス国語科教育 / 義務教育の体系性 / 教師教育 / マルチモダリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度の研究進捗状況を報告いたします。
1 多言語文化共存社会を前提としたイギリスの義務教育における国語科教育の基本的な言語観の一つに、ナショナル・カリキュラム改訂、UKLA(United Kingdom Literacy Association)他による調査研究プロジェクト等に影響を与えてきた、ロンドン大学教育研究所、記号学および教授学教授、Gunther Kress氏のマルチモーダル社会記号論がある。言語のみならず、画像、音声、身体表現他、異なるモードを組合せ、学習者が意味を生成する過程そのものを重視する必要性を説いた"Multimodality:A social semiotic approach to contemporary communication"(Routledge,2010)を訳出し、『マルチモダリティー今日のコミュニケーションにせまる社会記号論の試み』(溪水社、2018)を刊行した。この理論は、1990年以降の日英比較国語教育の動向を捉える基礎理論であり、本助成研究の基盤理論でもある。この基礎理論に基づき、マルチモーダル・アプローチから、イギリス義務教育における国語科学習指導は試行を重ねてきた。文学を軸とした対話の場の創造も、省察的読みの場も、モード間の関係思考力と無関係には展開して来なかった。そのありようを素描するための基礎理論でもある。
2上記訳出作業を踏まえ、本研究課題とかかわらせ、研究論文「イギリス初等国語科教育における意味生成過程再考のこころみーマルチモーダル社会記号論の提言と実践的応用への試行」(『国語教育学研究誌』31号、2018,pp.169-178)をまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、イギリスの現職教育にみる文学の省察的読みの力の育成にかかわる対話型の学習指導プログラムを明らかにすることである。 ここでいう「対話型」の背景には、多言語文化があり、異なる社会文化的価値観を有した指導者、学習者が、いかに文学言語を信頼し、共有する場を創造することで、省察的な読み手を育みうるかが問われている。 2018年度には、その基盤理論であるGunther Kressの著書を訳出し、『マルチモダリティ』(溪水社)として世に問えたことは、日英比較国語教育の基礎研究資料としての価値のみならず、改訂学習指導要領が見据えている、AIとの共存を含む、2030年以降の異種混在共存社会への示唆の一つとなるものと考える。数年前からの訳出作業が形を得、本研究の確固たる基盤を表し得たことは、当初の計画を越えた成果であった。
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Strategy for Future Research Activity |
イギリスの現職教育にみる文学の省察的読みの力の育成にかかわる対話型の学習指導プログラムの具体の一つとして、小説の学習指導を取り上げる。Centre for Literacy in Primary Education (CLPE,小学校リテラシー教育センター)からEnglish & Media Centre(EMC、イギリス中等国語科教育センター)へと連動する現職教育プログラムに見る小説の学習指導の実践理論と方法、評価を、文献調査を中心に、『嵐が丘』他を事例として明らかにする。 EMCのセンター長、指導主事他へのインタビューや授業参観を通して、小中連繋のありようについて、より実際的な探求の機会をもつ。 これら考察の成果は、学会発表、研究論文等でし、省察の機会を持つ予定である。
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Causes of Carryover |
2018年度から2019年度へ4,264円繰り越し、次年度使用額に組み込み、当初の予定に沿て、文献資料購入、イギリス出張費用を中心に使わせていただきたいと考えている。 4,264円は、必要とした書籍代金には不足しており、消耗品等で使い切るべきであったかとも思われるが、次年度に繰り越し、より有効に使用できればと考えた。ご理解いただければ幸いである。
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Research Products
(4 results)