2020 Fiscal Year Research-status Report
大学職員の内発性に基づく役割モデルの再構築に向けた日・韓・台比較研究
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18K02732
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
深野 政之 大阪府立大学, 高等教育推進機構, 准教授 (40552758)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
光本 滋 北海道大学, 教育学研究院, 准教授 (10333585)
林 透 山口大学, 大学教育機構, 准教授 (20582951)
菊池 芳明 横浜市立大学, 教育推進課, 学務准教授 (60347193)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 大学職員 / 役割モデル / 大学教育改革 / メンバーシップ型 / 内発的改革 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度には新型コロナウィルスの影響により,予定していた海外訪問調査が全面的にできなくなった.このため,日本における大学職員の現状の役割モデルについて重点的に検討し,特に近年の大学ガバナンス改革を受け変化している現状とその課題について,韓国・台湾との対比により検証した.さらに濱口桂一郎(2013年)が世界で標準的な雇用形態「ジョブ型」と対比する形で提示した「メンバーシップ型」として日本の大学職員を,その特徴として①強い共同体性,②専門性への忌避(総合職志向),③強い独立性を持つ〈事務局〉への一元化,の3点を抽出した.かつて盛んに論じられたアメリカ型専門職モデルへの移行が実現していないのは,日本の大学職員が「メンバーシップ型」という,欧米では一般的な「ジョブ型」とは大きく異なる雇用労働システム下にあり,システム全体の差異,例えばその〈共同体性〉を無視して「ジョブ型」に移行することは,それが職員の内発的必要性に発するものでは無かったからである.本研究計画で遂行した現地調査および情報収集を踏まえ,現段階で得られている知見と中間的仮説は以下の通りである. ■韓国・台湾とも教員が事務管理職を兼務していることが多く,また上級職員の中に少数ではあるがアメリカ式のジョブ型雇用と専門職能資格制度が見られる. ■多くの一般職員は日本と同様の一括採用であり,人事異動もあることからメンバーシップ型に近い特徴を持っている.部署別採用もあるが,採用後数年で人事異動の対象となる. ■韓国・台湾とも,職員は学内において〈事務局〉のような形で一元的に組織化されてはおらず,教員組織(学部等)と同様に学長のもとにある個別部署に所属している. ■台湾で一般職員に大学院での修学が奨励されるのは,社会人大学院が普及しているという一般的事情とともに,所属長が教員であることの影響もあるのではないか.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2018年度には2度にわたる台湾での訪問調査,2019年度には韓国と台湾で訪問調査を行い,韓国においては大学行政管理学会との共同企画により国際研究集会を開催した.また学会誌への調査報告採録(2回),日本高等教育学会大会自由研究発表(1回)に加え,研究会報告(4回)など,当初の研究計画を超える調査活動と研究成果発信を行った. 2020年度は新型コロナウィルスの影響により,予定していた海外訪問調査が全面的にできなかったが,日本の大学職員の現状分析を重点的に行ったことに加え,韓国・台湾の法令・制度に係る情報収集を進め,日本及び欧米諸国との比較検討を進めることができた.また学会誌への調査報告採録(1回),大学教育学会大会自由研究報告(要旨集録掲載)に加え,研究会報告(3回)を行った. 2021年3月に大学評価学会全国大会(オンライン開催)において本研究課題の中間的総括を行った際に,(1)研究計画の着実な推進,(2)学会・研究会との共同調査等の連携に加え,(3)本研究独自のWEBページ作成による進捗報告と広報に対して,高い評価を得ることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度には,2020年度に実施できなかった韓国での現地調査(2回目)を行う.2019年に台湾で実施した研究チームによる独自調査と同様に,職員への聞き取り調査を重点的に行う.国内で開催する研究会では,韓国・台湾の国立大学と私立大学,都市型大学と地方大学,大規模大学と小規模大学といった違いにも注目する.2022年度以降には,各国におけるモデル生成の経緯,背景および構造の分析に取り組み,合わせて大学行政管理学会,大学評価学会との共催により,韓国・台湾の共同研究者を招聘して国際研究集会を開催する.さらに本研究の成果報告として,日本の大学職員の新たな役割モデルについて学会発表と研究論文等により提言を行う. 日本の大学職員に対する新たな役割モデルを提言するには、さらなる現地調査と韓国・台湾の研究者・職員との研究交流が必要である。本研究計画による次年度未使用額に加え,新たな科研費基盤研究(C)に採択されたことから,当初の計画以上の成果を得られるものと期待されている.
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス蔓延の影響により,2020年度中は海外訪問調査および国内研究出張が全面的にできなくなったため,次年度未使用額が発生した. 次年度未使用額は2021年度に予定する海外訪問調査および国内研究出張の経費として使用する予定である.
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Research Products
(12 results)