2022 Fiscal Year Research-status Report
On Global Torelli type theorem of compact Kaehler manifolds with trivial first Chern class
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18K03231
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
松下 大介 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (90333591)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | シンプレクティック / 力学系 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は射影代数多様体の自己同型群に含まれる無限巡回群の作用について調べた. 一般に群が多様体に作用しているとき, 固定点や周期点がどのくらいあるかというのは主要な問題であり, これまでにも様々な研究成果が知られている. そのほとんど全ては Lefschetz の固定点定理を利用したものである. この Lefschetz の不動点定理にはいくつかの版があり, 一般に良く知られているものでは固定点が孤立しており, さらに固定点の接空間に誘導される作用が固有値 1 を持たない場合にのみ適用出来るという制限があった. 一方, SGA4 で展開されている一般の版ではこのような制限はない. これを利用して射影代数多様体に無限巡回群が作用しており, さらにコホモロジーに誘導される作用が全ての次数で unipotent である場合, 周期点の集合には必ず代数曲線が含まれること, さらに周期点の定義イデアルは周期を大きくすればいくらでも小さくなる, すなわち周期点は部分スキームとしてはいくらでも大きくなることを示した. 応用として既約シンプレクティック多様体の Picard 数が 3 以上であれば, strictly nef な divisor , すなわち全ての代数曲線との交わりが正であるような divisor は ample であることが従う. この主張は Calabi-Yau 多様体と呼ばれるクラスについて予想されていたことであるが, 3 次元以上の Calabi-Yau 多様体に分類されるもので abel 多様体以外のものである程度一般的なクラスに対して示されたのは初めてである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題の一つの大きな目標は既約シンプレクティック多様体に関する abundance 予想の解決であった. 解決する方針として, 自己同型群が無限巡回群を部分群に持つような既約シンプレクティック多様体に対して予想を示せば良いことがこれまでの研究でわかっており, 無限巡回群の作用の固定点や周期点の情報をどうやって引き出すかが問題であった. そのためのアイデアをいくつか考えていたが, 20 - 22 年度の間コロナ渦で国内外の研究者との交流が著しく制限された中では発展させる事が難しかった. 一方 23 年 2 月に三週間 New York Stony Brook 大学を訪問することが出来, そこで三年ぶりに対面で何人かの研究者と研究交流が出来た. そこで Lefschetz の不動点定理のこれまで見過ごされていた定式化が有効であることがわかり, 周期点の様子を調べる方針に目処がついた.
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Strategy for Future Research Activity |
既約シンプレクティック多様体の自己同型群が無限群となる場合, その部分群は自身も含めて任意の階数の自由群を含む非常に非可換性が大きい群となるか, あるいは自由 abel 群の有限拡大のどちらかになることが知られている. 後者の場合, 周期点の集合はコホモロジーへの作用による固定されるコホモロジー類に属する代数曲線で覆われており, さらに固定されるコホモロジー類は extremal という性質を持つ. 極小モデル理論においては コホモロジー類が extremal かつ標準因子の負の側にあるという性質を持つ代数曲線で覆われる部分多様体は双有理写像で潰してより小さい射影代数多様体が得られることが出来ることが知られている. 周期点の場合固定されるコホモロジー類は標準因子に対して非負の側にあり, 極少モデル理論をそのままでは適用出来ない. そこで極小モデル理論の諸定理が周期点の集合にどれだけ拡張出来るかを中心に追求し, 本研究課題の主目標の一つである abundance 予想につなげたい. またこの方法が一般の Calabi-Yau 多様体にもどのくらい通用するかについても調べたい.
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Causes of Carryover |
2022 年度においても国際研究集会を行うには行動制限が厳しく, 予定していたものは開催を次年度 (2023 年 5 月) に移したため.
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Research Products
(2 results)