2022 Fiscal Year Annual Research Report
A rigorous analysis of the stability of magnetism in the Hubbard model: An approach using operator inequalities.
Project/Area Number |
18K03315
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
宮尾 忠宏 北海道大学, 理学研究院, 教授 (20554421)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 金属強磁性 / 作用素不等式 / 富田・竹崎理論 / 電子・格子相互作用 / 基底状態 / 多電子系 / Kondo格子模型 / 周期的Anderson模型 |
Outline of Annual Research Achievements |
1,伝導電子が一つしかない特殊な系(one Kondo lattice system: OKLS)について,北海道大学博士課程の西亦和宏氏,冨永隼人氏と共同研究を実施した.OKLSの基底状態の性質は,1991にSigrist等により詳しく解析されている.本研究では,OKLSとフォノンが相互作用する系の基底状態について詳しく解析した.その結果,Sigrist等により解明された基底状態の磁気秩序は,電子格子相互作用のもとでも安定であることが明らかになった.さらに,強結合極限における振る舞いも数学的に厳密な解析により明らかにした.得られた結果は国際誌に掲載されている. 2,周期的Anderson模型(PAM)により記述される多電子とフォノンが相互作用する系の基底状態に関する研究を,北海道大学博士課程(当時)の冨永隼人氏と共同で実施した.PAMの基底状態の厳密解析は,1992年にUeda等によるspin鏡映正値性による研究が有名である.一方で,この模型にspin鏡映正値性の方法を応用することは,技巧的になることが知られていた.そのため,電子とフォノンの相互作用まで考慮したPAMのspin鏡映正値性による解析は,数学的に困難であることが容易に予想された.我々の共同研究において,筆者が発展させてきた作用素不等式の理論によりこの困難を乗り越えた.成功するまでの道のりは長く,この問題に取り組んでから3年以上の時間が必要であった.我々の研究により,基底状態の磁気的性質は,電子フォノン相互作用のもとでも安定であることが明らかにされた.同時に,作用素不等式に関する新しい知見も得られている.得られた結果の一部は論文としてまとめ,現在国際誌に投稿中である. 3,研究期間において,申請書で提案した目標の8割以上を達成した.一方で,当初の予想を超えた問題も出てきており今後もこのテーマに関する研究を継続する.
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