2019 Fiscal Year Research-status Report
微分方程式の解の滑らかさの可視化による数値計算の品質保証に関する基礎研究
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18K03436
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
今井 仁司 同志社大学, 理工学部, 教授 (80203298)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 宏志 京都大学, 情報学研究科, 准教授 (00362583)
磯 祐介 京都大学, 情報学研究科, 教授 (70203065)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 特異点 / 正則 / 滑らかさ / 数値計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
爆発解を持つ非線形常微分方程式の解の滑らかさを数値的に調べた。数値計算は、丸め誤差の影響を排除するために、exflibライブラリを用いて多倍長精度で行った。爆発時刻が既知の厳密解を持つ非線形常微分方程式に対して、数値極限を用いて爆発解の存在と爆発時刻を数値的に推定した。次に、スペクトル選点法を用いて、初期時刻から推定された爆発時刻の前後までの区間における解を数値的に求めた。離散化方程式は非線形となるので、数値計算ではニュートン法を用いた。厳密解が未知の場合を想定して、数値解同士の差を用いた誤差の収束状況を調べると、推定された爆発時刻の手前までの計算区間では誤差は指数関数的に減少しており、解析的な解が存在していることが数値的に示された。計算区間が推定された爆発時刻をまたぐと誤差は収束しなくなった。これらから、解が解析的である区間と特異的である区間が数値的に求められた。 このような情報によって、解の数値的正則性地図を作成することが可能となった。 昨年度に引き続いて、スペクトル選点法を用いた補間関数の構成によって、一変数関数の特異点(解析的でない点)の場所の特定と滑らかさの数値解析を試みた。今年度は,特異点が2個で、それぞれにおいて滑らかさの異なる関数に対して数値計算を行った。微分行列をかけるにしたがって、振動現象が区間全体に広がり、振動を抑える平均化の作業を行ったところ、予想もしなかった局在化した振動現象が見られた。 ヘルダー連続解を持つ線形の非整数階微分方程式の数値計算を行った。解の滑らかさを調べるためにスペクトル選点法を用い、丸め誤差の影響を排除するためexflibライブラリを用いて多倍長計算を行った。解のヘルダー指数と計算誤差の収束特性に興味深い関係が得られた。これによって、解の数値的正則性地図を作成することが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究テーマである微分方程式の解の滑らかさの可視化に関して、ほぼ計画通りの成果が上げられた。爆発解を持つ非線形常微分方程式に対しては、解が解析的な区間と解の爆発時刻を数値的に求める手法を確立した。これよって、解の正則性地図が作成可能となった。研究成果に関する論文を現在執筆中である。次に、ヘルダー連続解を持つ線形の非整数階微分方程式に対しては、解のヘルダー指数と計算誤差の収束次数の関係を数値的に求めることに成功した。これは、解の正則性地図の作成に繋がるものであり、理論解析のネタを提供するものである。
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Strategy for Future Research Activity |
一変数関数の特異点が2個でそれぞれにおいて滑らかさの異なる関数に対して、領域分割法を用いるなどして、正則性地図の作成を目指す。また、非整数階微分方程式に対して、大量の数値計算結果をデータベースにして、解の数値的正則性地図の作成を目指す。また、ヘルダー指数と計算誤差の関係の理論解析に着手する。
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Research Products
(3 results)