2022 Fiscal Year Research-status Report
流れない液体の時空構造の第一原理的解明を目指す液体論と乱流理論の共同展開
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18K03459
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
大信田 丈志 鳥取大学, 工学研究科, 助教 (50294343)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤 晋 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 教授 (40321616)
松本 剛 京都大学, 理学研究科, 助教 (20346076)
大槻 道夫 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 准教授 (30456751)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | コロイド液体 / 変位相関 / 専断歪み相関 / 剪断弾性 / 揺動弾性体 / 乱流 / ラグランジュ的な相関 |
Outline of Annual Research Achievements |
液体が濃密化に伴って流動性を失う現象の背後にある時空構造に対し、乱流理論にヒントを得たラグランジュ的な統計量によるアプローチを推進し、ミクロな粒子のダイナミクスとマクロな粘弾性現象論を結ぶ中間尺度の領域に着目して、コロイド液体に関する理論的な研究を行った。ここでラグランジュ的というのは粒子の集団に貼り付いて動く曲線座標系を用いる記述を意味する。依然としてCovid19問題による制約は大きく、Zoomによる遠隔での打ち合わせを中心とせざるを得なかったが、それでも8月と12月に短時間ながら対面での議論を行い、研究を進めることができた。 本研究で扱うコロイド液体とは、斥力相互作用する多数のブラウン粒子が懸濁した系の液体状態のことをいう。このような系では、濃度を上げると、粒子が互いの運動を妨げあうため、個々の粒子のバラバラな運動が抑制され、多くの粒子が協調した運動が生じる。この協同運動と、より高濃度の「流れない液体」が示す弾性的な応答との関係を探るために、弾性体の剪断歪みに基づく統計量を用いた先行研究が盛んに行われてきた。 我々は、弾性論をコロイド液体の第一原理的な解析に結びつける場としてミクロな変形勾配テンソルに着目すべきだと考え、そのような場のラグランジュ的な相関を用いた理論を構築した。特に、前年度までの研究により、先行研究で扱われたような剪断歪みの相関を、粒子の変位相関と結びつける関係式を導出した。 本年度は、この関係式に基づく研究成果の発表に取り組んだ。具体的には、物理学会での研究発表を行い、さらに研究成果を論文としてまとめるための議論を進めた。ただし、論文については、上記の関係式だけを内容とするものを拙速に投稿するよりは、次期プロジェクト〔基盤(C)21K03404〕による発展的成果と併せて充実した内容とすべきであると考え、投稿は次年度に持ち越すこととした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
もともと直接対面での議論を中心として計画していた本研究は、Covid19問題によって極めて深刻な打撃を受けた。代替策としてZoomによる遠隔での打ち合わせに切り替えたものの、理論的なアイディアを深めたり広げたりする場としての効果は、対面での議論に全く及ぶものではなかった。本年度は、授業への影響が出にくい夏休みの時期に対面での議論を少しだけ復活させ、その効果を改めて実感したが、前年度までの遅れを取り戻すには至らなかった。 さらに、大学全体の人員削減が止まらず、各教員が授業で担当する学生の数が以前よりも増大していることに加え、依然として遠隔授業が必要であり、その事前準備と事後作業にも時間を取られた。そのため研究時間の確保が難しくなったことも遅れの一因である。 それでも「研究実績の概要」の項で述べたとおり論文執筆を進めているが、結果的に、論文投稿を次年度に持ち越さざるを得ない状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
研究成果自体は既に得られているので、その内容を論文にまとめるための議論と作業を進める。 併せて、新年度(2023年度)の8月に、統計物理分野の重要な国際会議が東京で開催される予定である。ここでの成果発表を計画している。
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Causes of Carryover |
当初、2020年の時点で国際会議を想定して予算を組んでいたが、これがまずCovid19のために延期され、続いて2021年の夏に遠隔開催となった。そのために、海外旅費等が支出されないまま、既に2022年度が始まる時点で繰越が必要な状況となっていた。 繰越額の一部は、旅費(対面での議論および学会発表)ならびに出張用ノートパソコンのソフトウェアの整備の形で有効活用した。しかし、研究自体が本来のペースを取り戻せず、成果報告が次年度に食い込むのが避け難い状況であることを踏まえ、Covid19に伴う研究計画変更として「事業期間再延長承認申請書(F-14-CV)」を提出し、未使用の金額を2023年度に繰り越した。 繰り越した金額の使途については、「今後の研究の推進方策」のところで言及した国際会議(StatPhys 28)の参加登録費および旅費に充てることを計画している。
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Research Products
(2 results)