2021 Fiscal Year Research-status Report
銀河団からブラックホールに至る冷たいガスの流れとAGNの活動性の研究
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18K03709
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
永井 洋 国立天文台, アルマプロジェクト, 特任准教授 (00455198)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 活動銀河核 / ブラックホール降着流 / 銀河団 / 電波観測 / ALMA望遠鏡 / VLBI |
Outline of Annual Research Achievements |
【当初の研究の狙い】ペルセウス銀河団中心の巨大楕円銀河NGC 1275 から放射される分子ガス輝線を、アルマ望遠鏡を用いて、これまでにない解像度で観測を行う。この観測によって、中心10-1000パーセクスケールにおける冷たいガスの流れの空間分布・運動を明らかにし、銀河団からブラックホールに至る冷たいガス降着(cold accretion)の実体を調査する。本観測によって、(1) キロパーセクスケールで見られる分子ガスフィラメントと核周円盤との関係、(2) 数値実験から予想される降着流の非一様性、(3)「ひとみ」衛星で発見されたFe-Kα 輝線の所在、といったテーマの解明に取り組む。
【今年度の実績】当初の研究の狙いは概ね2020年度で終了し、2021年は発展的な内容に取り組んだ。アルマ望遠鏡の観測によって、中心100パーセク以内の領域に分子ガス核周円盤が存在することがわかった。さらにVLBIデータを用いて、核周円盤全体から電波連続波放射を検出した。この電波連続波放射は超新星爆発に伴う放射で説明できることから、超新星爆発によって作られるガス乱流が、核周円盤の角運動量輸送に効くことが示唆される。実際に理論モデルを用いて、観測された電波連続波放射強度から期待される乱流速度を見積もると、アルマで観測された乱流速度とよく一致することがわかった。核周円盤からさらに内側に向かってガスを降着させるための角運動量輸送機構は未だ研究の途上にあるが、本研究によって明らかになった超新星爆発に伴う乱流が、ガス降着に本質的な役割を果たしているかもしれない。本成果を論文(Nagai, H. & Kawakatu, N. 2021)として出版し、学会・研究会等で、研究成果の発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、当初は2020年度までの研究期間を予定していた。COVID-19拡大に伴う社会情勢の変化に伴い、参加を予定していた国際学会や研究会がキャンセルされるなど、研究成果発表の場が減少してしまったことで、研究期間を延長した。研究目標は概ね2020年度で達成されていて、2021年度は発展的内容に取り組んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
COVID-19による不安定な社会情勢は2021年度も続いたため、対面での研究会の参加の機会や共同研究者との研究議論の機会は依然として少なく、予定した研究資金の使途が限られてしまった。2022年度に繰り越して、研究発表・共同研究の推進に使用する予定である。また、延長期間を使って、新たに取得したALMA望遠鏡データの解析と論文化に向けた作業を行う予定である。
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Causes of Carryover |
COVID-19感染拡大に伴う社会情勢の変化により、研究発表の機会が大幅に減少し、参加予定だった研究会が開催されなくなってしまったことが主な理由。現在、移動制限が徐々に緩和されつつあり、2022年度には研究会の開催機会が増えると思われ、昨年度までの成果を、積極的に発信する予定である。また、当初の研究目標はほぼ達成済みではあるが、今後も発展的な内容に取り組み、研究のために必要な計算機・ソフトウェア等を購入する予定である。
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Research Products
(8 results)