2019 Fiscal Year Research-status Report
氷星間塵内部での分子生成過程解明に向けた水素原子拡散の研究
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18K03717
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
柘植 雅士 北海道大学, 低温科学研究所, 特任助教 (60454211)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 水素原子拡散 / 分子進化 / 星間分子雲 / 星間塵 |
Outline of Annual Research Achievements |
極低温の星間分子雲における初期分子進化過程の全容を解明するために、氷星間塵内部に取り込まれた原子・分子の反応プロセスの理解が重要である。本研究は、水素原子が氷内部に侵入し拡散していくかどうかを明らかにすることを目的とし、そのための研究手法確立を目指している。 2019年度は、layer状の氷(H2O氷でカバーされた一酸化炭素(CO)固体)へのH原子照射実験を行い、COとH原子の逐次的水素化反応生成物(H2CO及びCH3OH)が生成することを見出した。反応効率の温度に対する依存性、及び、H2O氷の厚みに対する依存性を系統的に調べ、COの逐次的水素化反応は、比較的分厚い氷(10層以上)、且つ、比較的高い温度条件(>20 K)で効率よく起きることがわかった。これらの結果から、水素原子のH2O氷への取り込み過程、ならびに、H2O氷中での拡散様式についての示唆を得た。本研究成果は2020年度に国際学術誌において発表を予定している。 国立交通大学(台湾)のYuan-Pern Lee教授との共同研究として、芳香族化合物へのプロトン付加・水素原子付加反応の研究を引き続き行った。Aniline (C6H5NH2)のプロトン化についての研究成果をJournal of Physical Chemiistry Aに、Corannulene (C20H10)の水素原子付加についての成果をJournal of Chemical Physicsに発表した。 希ガス固体中で水素原子拡散により生成する希ガス水素化物について、その熱安定性を調べた研究をChemical Physics Letter誌に発表した(国際共同研究)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度の研究により、本研究課題の実証目標の一つである「H2O氷の内部をH原子が拡散して反応が起きること」が示すことが出来たため、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度に得られた研究成果を国際学術誌に発表するとともに、既存の研究計画に基づき研究を進める。 特にH2O氷の構造に対する依存性を調べることを目標とする。
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Causes of Carryover |
物品費の使用額が請求額未満であったのは、研究グループで現有の装置で実施可能な実験を行い高額の設備備品の購入が不要であったため。2020年度初めに必要な物品を購入し、研究計画を推進する。
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Research Products
(8 results)