2020 Fiscal Year Annual Research Report
Formation and evolution of a reduced-type proto-atmosphere on early Earth
Project/Area Number |
18K03719
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
倉本 圭 北海道大学, 理学研究院, 教授 (50311519)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 原始惑星 / 初期地球 / 脱ガス / 原始太陽系星雲 / 還元型原始大気 / 流体力学的散逸 / 元素分配 |
Outline of Annual Research Achievements |
脱ガス大気成分と原始太陽系星雲ガス成分からなる混成型原始大気の惑星集積に伴う進化過程を数値シミュレートし、その地球化学的な帰結の検討を進めた。概ね、火星質量を上回る原始惑星では、両成分の混合が起き、マグマオーシャンを介して惑星深部に原始太陽系星雲ガス成分が取り込まれうることが明らかになった。地球深部起源のマントル物質が太陽組成に近い水素同位体比、希ガス同位体比を示すことから、原始地球は星雲ガスの散逸前に火星質量以上に成長したことが示唆された。 太陽極端紫外線の照射によって駆動される、水素に富む初期大気の流体力学的散逸モデルの構築を進め、光学活性分子種による放射冷却と、大気成分の光解離の効果を厳密に取り込んだ。メタンとその光解離生成分子種は、顕著な放射冷却効果を持ち、1%未満のメタン濃度でも、大気散逸率は著しく抑制され、重元素の散逸がほぼ停止する可能性があることが判明した。初期太陽に推定される紫外線強度を当てはめると、億年単位の時間スケールに渡って水素分子やメタンが地球原始大気に高濃度で残存したと推定される。これは、地球表層の炭素および窒素の同位体組成が、材料物質の生きのこりと考えられる始原的隕石の同位体組成からほとんど変化していないことと調和的である。また、生命前駆有機物の生成に適する還元的な大気化学組成が、地球上に生命が誕生したとされる約40億年前まで持続していたことを示唆する。 集積期の惑星における揮発性元素のガス・シリケイトメルト・金属鉄間の分配の熱力学モデルの構築を進め、水素・炭素に加えて、窒素と硫黄の取り込みを進めた。数百気圧以上の圧力下では、窒素が金属相へ選択的に分配され、初期地球の温室効果源ならびに生命前駆物質として着目されるアンモニアが一定量生成されること、また、2000 K超の高温下では、硫黄化合物の気相分配が顕著になることが示された。
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